■シベリアへ!シベリアへ!シベリアへ!

■演出:三浦基,テキスト:アントン.チェーホフ,ドラマトゥルク:高田映介,監修:中村唯史,劇団:地点
■神奈川芸術劇場.中スタジオ,2019.5.27-6.2
■劇団地点の特異な舞台が完成の域に達したことを強く感じました。 ダンスのような動きをしながら喋り続ける役者たちの立ち振る舞いも完璧です。 台詞もビシビシと脳味噌に伝わってくる。 馬車を真似たスキップが身体と科白の連動を滑らかにしたのでしょう。 役者がまとまって動くその姿は広い舞台を引き締める効果もあった。
風船や逆さ白樺、くすんだ鏡と床照明で銀色系の冷気が感じられる美術です。 乱雑に並べた板切れが旅の姿を物語っていた。 音響はいいが、でも音楽がイマイチに聴こえました。 ロシアとシベリアの距離感が掴み切れていない。 しかし総合芸術としての完成度がみえます。
紀行文学があるようにこれは紀行演劇とも言ってよい。 チェーホフのサハリン旅行は知りません。 この舞台にはシベリアの厳しい自然、住民の生活そして旅の苦しさが現れています。 この旅がチェーホフ作品に影響を与えたのは確実と言ってよい。
帰宅して直ぐに世界地図を広げてしまいました。 イルクーツクがこんなにも南に位置していたとは! シベリアはその北の先です。 改めてその広さに驚きました。 登場した都市を目で追いながら芝居のことを考え続けたのは言うまでもありません。 チェーホフの鼓動が聞こえてくる舞台でした。
*劇場サイト、https://www.kaat.jp/d/tosiberia