■オレステイア

■原作:アイスキュロス,作:ロバート.アイク,翻訳:平川大作,演出:上村聡史,出演:生田斗真,音月桂,趣里,横田栄司,神野三鈴ほか
■新国立劇場.中劇場,2019.6.6-30
■観る前に劇場WEBの粗筋等を読んで疑問が浮かぶ。
疑問1.母クリュタイメストラは子の生贄を知った時ナゼ止め(られ)なかったのか?
疑問2.オレステイアはナゼ母を殺したのか?
ということで劇場へ向かった。 
我が子イピゲネイアを生贄にする叔父メネラオスの国家と戦争の論理に、父アガメムノンも母クリュタイメストラも反論できていない。 そして戦争に勝利した時、母はインタビューや演説で「(自身の)自殺も考えた」「(夫の)戦死も期待した」と言うが疑問1は解けない。
舞台が進み、母は父のことを<あいつ>と呼び、オレステイアと姉エレクトラも母に対して<あの女>と言っている(?)。 舞台奥から母の愛人アイギストスが少しずつ現れてくる。 オレステイアがアイギストスを直接語る場面は数分だが「ハムレット」が現前したようだった。 ここで疑問2が解決した。
母と子の密なる関係を母クリュタイメストラは幾度か語る。 娘エレクトラ以上にイピゲネイアを愛する場面も多く目にした。 「(夫を)殺す権利がある」と母は言い切るがその真意は疑問2へ続く。 疑問1を謎にしたことが誤っていたようだ。
この作品はオレステスの記憶と回想で出来ているらしい。 詩的な科白の為かギリシャ悲劇の硬さがみえる。 冷血を感じる美術が物語によく似合う。 でもデカ十字架は不要。 これでキリスト教が脳裏に浮かび集中が一瞬途切れてしまった。
「観たら読むな」をなるべく実践したいところだが今回は帰りにプログラムを買ってしまった。 「オレステイアを読み解く」(山形治江)で「ハムレット」に言及していて納得、しかし「(生き)残ったオムレット」はやはり食えない。
*NNTTドラマ2018シーズン作品
*劇場サイト、https://www.nntt.jac.go.jp/play/oresteia/