■イナバとナバホの白兎

■演出:宮城聰,出演:SPAC
■静岡芸術劇場,2019.6.8-9
■ケ・ブランリ美術館*1とC・レヴィ=ストロースとSPACのコラボ作品と言える舞台です。 レヴィ=ストロースも論じた「因幡の白兎」と北米先住民ナバホ族の神話「双子、水を渡る」「太陽の試練」を前半で演じ、後半はSPACのスタッフ・キャストがこれら神話を結び付け創作した共同台本でまとめている。 同じようなストーリーを3回観ることになります。 全体を祝祭音楽仮面劇として仕立てている。 
「因幡の白兎」は東南アジアの古典舞踊を見ている錯覚に陥ってしまう。 それはオオナムチ(大国主神)や八上姫が仏像のようなマッタリ仮面を被っていることやガムラン風に聴こえる打楽器演奏からです。 またナバホ族神話は南北アメリカ大陸のどこかで見たような古代文明風な仮面が登場します。 「因幡の白兎」は世界のどこでも探すことができると言うことでしょう。  
後半は仮面を脱いで演技をするのでより時代が近づいてくる。 物語は農耕と太陽の深い関係を描いている。 自然の恵をどのように使うのかを問うているようです。 そして地謡のようなコーラス、能のような動きもあり、それは脇能に近い。 レヴィ=ストロースも登場したが彼の宣伝にみえた。 毛筆で説明をする場面も同じです。 書道の紹介にみえる。 所々にコマーシャル臭さが有る舞台は美術館からの依頼用の為かもしれない。 この作品の一番の見所は役者を演者と話者に分け、そこに演奏者を入れた三者のハーモニーが際立っていたことでしょう。
アフタートークは都合で省いてしまったが、青木保の文化人類学と舞台の関係は聞きたかった。
*1、「マスク展」(庭園美術館,2015年)
*劇場サイト、https://spac.or.jp/2019/inaba-navajo2019