■ゴドーを待ちながら

■作:サミュエル.ベケット,翻訳:岡室美奈子,演出:多田淳之介,出演:大高洋夫,小宮孝泰,永井秀樹,猪股俊明,木村風太
■神奈川芸術劇場.大スタジオ,2019.6.12-23
■スタジオ中央にコンクリート模様の円形舞台が置いてあり周りを客席が囲っている。 寂れた公園にいるようだ。 忠犬ハチ公も(劇中では時々吠えて)いるし・・。 その円形の周りをウラジミールとエストラゴンはぶつぶつ回る。 いつもの一直線の道が見え難い。 ゴドーが遠くからやってくる気配が感じられない。 いきなり円環物語が強く現れてしまっている舞台だ。
観ているとウラジミール役大高洋夫の演技が他演者とは違ったリズムを持っていることが分かる。 その動きと形は予定調和を感じる滑らかさだ。 エストラゴン役小宮孝泰が逆の演技をするから二人の間にズレが生じる。 すれ違ったズレは異化効果まで至らない。 ポゾーとラッキーは目が点になる面白さだ。 どこか日常的な喋り方のポゾー、硬直的存在感のあるラッキーが組み合わさると非日常的な空気が張り詰まっていく。
今回は現代的な新訳と演出の<ボケとツッコミ>にしたらしい。 しかも2バージョンを上演している。 観終わってから、もう一つのバージョンをみないとウラジミールへの疑問が解けないのではないか?と考えてしまった。 でも都合がつかない。
ベケットの作品を観る時は劇場へ行くまでが大変だ。 いつも行く気が失せていく。 今回も体が怠くなってきた。 観た後はしかし、ベケットはなんと凄いのか!と思わずにはいられない。 今回もそうだった。 観劇前後で落差が出る作家である。
*劇場、https://www.kaat.jp/d/Godot