■機械と音楽

■作・演出:詩森ろば,出演:田島亮,三浦透子,浅野雅博ほか,劇団:serial number
■吉祥寺シアター,2019.6.12-18
■ロシア構成主義建築家たちの群像劇です。 主人公はイワン・レオニドフ。 いきなりですが、彼の「重工業商ビル(案)」は一度みると忘れられない。 レトロだが未来を見つめる人類の希望と孤独が漂う。 直線が天上へ延び、更に視線をのばすと双発機の黒い影が・・、ロシア構成主義のテーマ曲が聴こえてくる光景ですね。 この作品についてはレオニドフ本人が舞台で何度も語っている。
そして彼の都市計画は斬新です。 恋愛や家族の新しい考え方を建築に取り込んでいく。 その共産主義化は<機械ではなく音楽>に近い。 ロシア・アバンギャルドの言う<生活の機械化>です。 しかしスターリンが機械から音楽を打ち捨ててしまった。
コンスタンチン・メーリニコフも登場します。 彼の自宅、円筒形外壁の六角形窓でこれも忘れられない。 住み心地は知りません。 彼はこの自宅に隠棲し1930年の大粛清を生き延びた。 他にモンセイ・ギンスブルクとアレクサンドル・ヴェスニン。 後者はヴェスニン3兄弟の末っ子です。
建築家たちの親玉はレフ(芸術左翼戦線)を結成したウラジーミル・マヤコフスキー。 登場しないが多くの場面で彼の言動を聞くことができる。 詩人と建築家。 この組み合わせをみても、ソビエト革命が達成できたのは奇蹟としか言いようがない。
建築家群像劇は珍しい。 レーニンに始まりスターリンで終わる激動の時代です。 時代を絡ませた群像を劇的に舞台に表現できるかが課題ですね。 今回は建築を接続詞に使うので厄介にみえる。 それでも歴史に翻弄される建築家たちの真摯な姿が現れていて楽しめました。
ところで「風琴工房」は覚え易かったが、劇団名が変わったようです。
*CoRichサイト、https://stage.corich.jp/stage/98577