■パブリック・エネミイ、人民の敵

■原作:H・イプセン,演出・出演:tgSTANティージースタン
■シアタートラム,2016.12.7-7
■机が置いてあるが略なにも無い舞台だ。 ト書きを喋ったり進行役をするプロンプタを含め役者は5人で一人3役から4役を熟す。 ただしプロンプタと医者ストックマンは専任で演じている。
台詞の喋りが速くて字幕が追い付けない場面がある。 もちろん字幕を読んでいる暇はない。 パッと見て意味を感じ取り役者に目をやるのが精一杯である。 一人数役だから尚更である。 途中喋り方が速すぎると観客から意見がでたが以降もテンポは落ちない。 実は通訳が客席前列にいて役者と観客の仲介をしているのだ。
ストーリは原作により近い。 チラシを読むとテクスト=戯曲に拘っている劇団らしい。 しかも演出家のいない役者だけのグループだと初めて知った。 「俳優がみな演出家でありドラマトゥルクである・・」。 この劇団を観るのは二回目(「ノーラ」)だが記憶に強く残る何かを持っている。 
観客席からは笑い声が聞こえる。 今日は余裕のある客が多いようにみえた。 「社会の敵はだれだ」を先日観ていたので人物関係を含め流れについていけたが忙しくて笑うところまでいかなかった。 観ながら米国大統領選挙を考えてしまう。 「人民の敵」も「人民の味方」もコインの表裏のようなものである。 「敵」「味方」を発する人々は追い詰められている。 これに「正義」が加われば最悪だろう。
*第3回イプセン演劇祭参加作品