■ルーツ

■脚本:松井周,演出・美術:杉原邦生
■神奈川芸術劇場・大スタジオ,2016.12.17-26
■インフルエンザの流行で公演中止か!? いや大丈夫でした。 でも先日の「キネマと恋人」は払戻になってしまった。 今年はインフルの当たり年ですかね。
大スタジオの端まで使い切った舞台は目に入りきらない。 道や建物の多くは黒系スチールパイプで組み立ててある。 下手のコンビニだけは写実的です。
忘れられた集落に生物学者が古細菌研究のため新しく住み込もうとする。 研究者小野寺は言う。 「古細菌を調べれば人類のルーツがわかる・・」と。 住民は昔からの生活を守る為、彼を共同体に迎えるかどうか儀式で試す。 集落の女が生んだ、誰が父親かわからない子をカミとして祀りあげるのがそれだ。 <誰の子かわからないようにする>を積み上げてルーツの深層構造を作る。 これが表の天皇制から裏の部落問題まで日本の<忘れられた構造>に近づける鍵かもしれない。 しかも小野寺の古細菌調査は<誰の子かわかるようにする>研究です。 この真逆な二つがあからさまに対決するのは共同体が弱くなっている証拠でしょう。 しかし二つの絡み合いをスタッフは無関心でいる。 文化人類学や民俗学から抜け出たようなキャラが賑やかすぎてルーツへ向かうベクトルが見えなくなってしまった。
*劇場サイト、http://www.kaat.jp/d/roots