■ヘンリー四世、第一部混沌・第二部戴冠

■作:W・シェイクスピア,翻訳:小田島雄志,演出:鵜山仁,出演:浦井健治,岡本健一,ラサール石井,中嶋しゅう,佐藤B作
■新国立劇場・中劇場,2016.11.26-12.22
■木材を乱雑に組み立てた美術と客席を歩き回る役者で劇場が芝居と繋がりました。 使い難い中劇場を上手くまとめた感じがします。 正面席で観たのですが役者の動きと立ち位置は均整が取れていて見事でした。
ハル王子が放蕩三昧をしている理由は科白で観客に伝えられます。 科白以外からは王子の心の奥を読めない。 それだけ王子は爽やかです。 雑音が無いと言うことです。 王子の言葉は聞き漏らすまいと耳を立てました。 対してフォルスタッフは饒舌ですね。 彼の台詞は芝居全体の半分を占めているのではないでしょうか? でも円やかさがあり過ぎる。 もっとゴツゴツ感を期待していたのですが・・。 もう一人、ヘンリ・パーシは中劇場向きですね。 科白に手の動きなどを交え反乱軍指揮官らしいカッコイイ身振りです。 第一部はフォルスタッフとヘンリ・パーシが面白くしていた。  
第二部前半にも戦争場面がありますが前後が続かずストーリの付録にみえます。 でも史劇として必要だったのでしょう。 次にフォルスタッフ旧友、地方検事シャロたちとの楽しい場面が続きますが緊張が緩んでしまいました。 そのままヘンリ四世の死そしてヘンリ五世の誕生と終幕まで一直線です。 作者は手を抜いたのでは?
新王はフォルスタッフを遠ざけるのですが、王権として当たり前で形式的な行動を取っただけにみえます。 でも彼は歳ですから遠ざける理由は無い。 ここでハル王の心が読めていなかったことで答えが見つからない。 脱皮した新王ヘンリ五世を引き立てたかっただけでしょうか?
全体がまとまっていて緻密な舞台でした。 調和のある演出が光っています。 シェイクスピアがこの作品を書いたのが1600年でヘンリ五世が活躍したのは1400年です。 当時の200年差は今の20年でしょう。 初演を観た人々はテレビで政治スキャンダルでも見ているような感覚で楽しんだのではないでしょうか。
*NNTTドラマ2016シーズン作品
*作品、http://www.nntt.jac.go.jp/special/henry4/