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■白き山

■脚本:古川健,演出:日澤雄介,出演:緒方晋,浅井伸治,西尾友樹ほか,劇団チョコレートケーキ ■下北沢・駅前劇場,2024.6.6-16 ■敗戦直後、郷里山形での歌人斎藤茂吉の晩年を描いた舞台です。 ・・茂吉の創作活動は衰えていた。 戦争の高揚感が失われた為もある。 戦争支持を謡った茂吉の短歌は息子宗吉から観念的だと指摘されるが今も信念を曲げようとはしない。 「戦争協力はやむを得なかった」と逃げ台詞も吐く。 ある日、茂吉は家政婦に気に入った歌は何か?と質問したが、短歌集「死にたまふ母」と聞いて満足する。 しかし家政婦はこの戦争で息子を亡くしていた。 これを聞いて茂吉は戦争協力歌が腐りきっていたことを認め目覚める。 彼は心を新たにして最上川を謡い始める・・。  物語に引きこまれていく力が舞台にありました。 カーテンコールでの観客の拍手も力強かった。 ベクトルが強い劇団で頼もしい。 帰宅後に茂吉本人、息子の茂太と宗吉、妻輝子や山口茂吉などを少し調べてみました。 そして再び舞台場面を思い出してみる。 背景の蔵王連峰が眩しかったですね。 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/314600 *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、日澤雄介 ・・ 検索結果は11舞台 .

■治天ノ君

■脚本:古川健,演出:日澤雄介,出演:劇団チョコレートケーキ ■シアタートラム,2016.10.27-11.6 ■主人公大正天皇嘉仁が明治と昭和の皇室を繋げながら、その先にある平成をも射程に入れて天皇とは何かを考えさせてくれる舞台である。 総理大臣大隈重信は言う。 「天皇とは神棚である」。 しかし人間天皇を目指そうとした嘉仁は現人神である父睦仁と祖父を目指す息子裕仁の板挟みに遭う。 これを達成できたのは、彼の持病や大隈が言う「第一次世界大戦の火事場泥棒」も背景にあったが、一番は側近を遠ざけての皇后節子との結婚生活だった。 世界大戦終結後の大正時代は爛熟する文化の匂いもする。 それは東宮輔導有栖川宮威仁や宮内大臣牧野伸顕が言う「日清日露戦争で臣民は疲れ切ってしまった」反動から来ている。 これも嘉仁の行動を後押ししたのだろう。 今、大正時代と周囲の政治動向が少しずつ近づいている。 脚本家も生前退位の話をしているが、先日「明治の日」制定の動きがあることをニュースで知った。 はたして昭和天皇即位のなか群衆の熱狂と万歳、君が代演奏で幕が閉じる・・。 *劇場サイト、 https://setagaya-pt.jp/performances/201610chiten.html

■2013年舞台ベスト10

□ ルル   演出:シルヴィウ・プルカレーテ,劇団:ルーマニア国立ラドゥ・スタンカ劇場    □ あの記憶の記録   演出:日澤雄介,出演:劇団チョコレートケーキ □ 駆込ミ訴へ   演出:三浦基,劇団:地点 □ 材料カエサル   演出:杉浦千鶴子,劇団:ラドママプロデュース □ わが友ヒットラー   演出:倉迫康史,出演:ORT-D・D □ MY FAVORITE PHANTOM   演出:橋本清,音楽:涌井智仁,出演:ブルーノプロデュース □ 毛皮のマリー   演出:高野美由紀,出演:劇団☆A・P・B-Tokyo □ もう風も吹かない   演出:平田オリザ,劇団:青年団 □ ノーラ   出演:tgSTANティージースタン □ ピグマリオン   演出:宮田慶子,出演:石原さとみ,平丘大ほか *並びは上演日順。  選出範囲はこのブログに書かれた作品。 映像は除く。 * 「2012年舞台ベスト10」

■2016年舞台ベスト10

□ 城塞   演出:眞鍋卓嗣,劇団:俳優座 □ 黒蜥蜴   演出:宮城聰,劇団:SPAC □ カルメン   演出:金森穣,舞団:Noism □ イェヌーファ   演出:クリストフ.ロイ,指揮:トマーシュ.ハヌス □ 安全区、堀田善衛「時間」より   演出:獄本あゆ美,出演:メメントC □ 夢の劇、ドリーム・プレイ   演出:白井晃,台本:長塚圭史,振付:森山開次 □ 887   演出・出演:ロベール.ルパージュ □ Cross Transit   演出:北村明子,ドラマトゥルク:キム.ハク,音楽:横山裕章 □ Woodcutters伐採   演出:クリスチャン・ルパ □ 治天ノ君   演出:日澤雄介,出演:劇団チョコレートケーキ *並びは上演日順。 選出範囲は当ブログに書かれた作品。 映像と美術は除く。 * 「2015年舞台ベスト10」

■帰還不能点

■脚本:古川健,演出:日澤雄介,出演:岡田篤,今里真,東谷英人ほか,劇団チョコレートケーキ ■東京芸術劇場・シアターイースト,2022.8.17-9.4 ■舞台は1950年頃? 政府機関で働いていた同輩が飲み屋に集まり戦時を振り返る話です。 その組織名は総力戦研究所。 彼らは戦争シミュレーションを仕事にしていたらしい。 その成果は1941年8月に首相官邸で発表された・・。 彼らは飲み屋で模擬実験を再現する。 政府・軍のトップ、たとえば近衛文麿・松岡洋右・東條英機の役に彼らはなり切る。 しかも場面ごとに役が入替る。 次々と劇中劇が展開していく面白い構造です。 研究所は戦争必敗の結論を提出していたのだが・・。 なぜ戦争を止められなかったのか? 「日露戦争でも・・、しかし勝った・・!」。 東條の言葉です。 途中で「帰還不能点」が何かわかりました。 それは南部仏印進駐の是非です。 政府が進めてきた近視眼的な外交政策が軍部の保身、つまり石油・ゴムの資源獲得、を許してしまった。 この進駐で米国は対日石油全面禁輸に踏み切り、そのまま日本は真珠湾攻撃へと突き進む・・。 20世紀史としての興味が尽きません。 現代でも形を変えて繰り返していることを認識させてくれる。 飲み屋の女将の夫が研究員だったこと、ナビゲータとしての彼女の立ち位置がよかった。 でも終幕の私的場面は付け足しの感じがしないでもない。 幕の下ろし方が難しい作品です。 *劇場、 https://www.geigeki.jp/performance/theater307/t307-3/

■無畏

■作・演出:古川健,演出:日澤雄介,出演:林竜三,渡邊りょう,浅井伸治ほか,劇団:チョコレートケーキ ■東京芸術劇場・シアターウエスト,2022.8.24-27 ■主人公は陸軍大将松井石根。 彼は「日支提携・アジア保全を進めたが南京事件の責任を問われ極東軍事裁判で死刑・・」・・。 舞台は上海事件の1937年頃から死刑執行の1948年迄を回想形式で時代が語られる。 タイトルは彼の辞世の句から採ったらしい。 松井役林竜三が熱演でした。 彼の思想であるアジア主義が蒋介石に見放され、また部下にも反映されない苦悩が描かれる。 特に南京での部下の不法・略奪行為に彼は心を痛ませる。 脇道に逸れるが、私の伯父が昭南島で英軍捕虜になった時の話を思い出しました。 伯父は兵士から弁当を貰ったことがあり、その中にはビスケット等々と紙に包まれた煙草が2本入っていたことを興味深く話してくれた。 煙草の入った弁当が兵士に配られていたことに愛煙家の伯父は衝撃を受けたようです。 伯父は既に亡くなっています。 舞台でも兵站(へいたん、ロジスティクス)が話題になります。 日本軍兵士の食料は現地調達になっている。 これが最悪の結果を招く。 調達は軍では徴発だが、混乱してくると徴発は略奪へ強姦へそして殺人へと向かうからです。 「戦争の素人は戦略を語り、玄人は兵站を語る」。 日本軍はアジアで非道に振舞ってきたのがわかる。 なぜなら兵站、特に兵士の食料、を軽んじていたから。 南京事件も同列です。 兵站を論ずる芝居ではないのですが、主人公松井石根の思想が戦場の物欲に飲み込まれてしまった。 悔恨で振り返っても生々しい核心に辿り着くのは大変です。 *劇場、 https://www.geigeki.jp/performance/theater307/t307-2/

■あの記憶の記録

■ 作:古川健,演出:日澤雄介,出演:劇団チョコレートケーキ ■サンモールスタジオ,2013.3.23-31 ■ 幕が開いた食事場面で現代イスラエル家族の話だと知る。 そして時代は遡る。 強制収容所解放の日、父イツハクは憎しみのためナチス親衛隊員を殺してしまう。 ・・。 憎しみは消せるのか? 個人への憎しみと民族や国家への憎しみの違いは? 二度と憎しみ合わないようにするには?  親衛隊員もイツハクも言う。 「・・憎しみが無くならない限り戦争は続く」と。 ・・。 パレスチナとの戦いを背景に子供たちと学校教師はこの答を模索していく。 重たい舞台を観ながら同じようにこの問いと答えを考え続けてしまった。 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/42846

■Sing a Song

■作:古川健,演出:日澤雄介,出演:戸田恵子,鳥山昌克,高橋洋介,岡本篤,藤澤志帆,大和田獏 ■本多劇場,2018.2.7-16 ■主人公三上あい子は淡路のり子に似ている。 とは言っても彼女をよく知りません。 舞台上の三上は音楽のプロだと分かります。 「人を死に追いやるような歌は歌ではない。 だから絶対に軍歌は歌わない」。 この100年の、音楽の真髄です。 小津安二郎を思い出してしまった。 二人の表現や立場は違いますが彼は軍服を絶対に撮らなかった。 ストーリーの先読みのできる作品ですが中村軍曹のジャズ好きが皆にバレる所から分からなくなる。 しかし彼のジャズ好きと三上の鞄持ち成田が旅順攻囲戦の生き残りという二人の趣味戦歴が物語を過激にさせない防波堤のようです。 長内大将の切腹や葛西中将の敗戦の弁が表面的になってしまったのも致し方ない。 沖縄へ特攻機が出撃していくのをみて三上は歌えなくなり泣いてしまう。 成田はそれをみてプロではないと諫めます。 それでも舞台の素晴らしいのは、歌手三上あい子の憲兵をも物ともせず歌への強いおもいで難局を乗り切っていく姿でしょう。 高齢客からすすり泣きも聞こえましたが自身の歴史と重ねてしまうのかもしれません。 * 第28回下北沢演劇祭 参加作品 *CoRichサイト、 https://stage.corich.jp/stage/89895

■密会

■作:大竹野正典,演出:日澤雄介,出演:稲荷卓央,清水直子,岡本篤 ■ザスズナリ,2014.8.14-18 ■幕開きのシーンが再び終幕にも繰り返される。 男1が殺人を実行に移す場面である。 そして舞台のすべてが殺人迄の過程をフラッシュバックのように物語っていく。 断片を寄せ集めたような構成である。 場面の非連続な切替が印象的である。  映画の技法を採用しているようだ。 男1は就職で躓いている。 被害妄想も強い。 そして最後は殺人を犯すストーリだが、どうも戴けない。 職が得られない辛さは伝わるが、殺人に結びつく演劇的感動が迫ってこないからである。 作者も「事件」を題材にすることの困難さをチラシで言っている。 「言葉を重ねていった果てに現出する世界がどれほど不条理で不可解なのか・・」。 一つの不条理劇にしたいようだ。 この芝居に欠けているのは存在の不思議さだと思う。 男2(藤井びん)、男4(岡本篤)はこれを気にしていたようにみえた。 しかし男1(稲荷卓央)はこれを気にかけない。 就職と被害妄想という、世界への対応と言葉の応酬が優先されすぎたからである。 存在の辛さを表現できれば演劇的感動に近づけたかもしれない。

■新・殺人狂時代

■作:鐘下辰男,演出:日澤雄介,劇団:流山児★事務所ほか ■スズナリ,2015.6.24-28 ■重苦しい舞台だった。 暗いし狭いし空気も濁っている。 しかも男ばかりだ。 作家と演出家は似た者同士のため共振してしまったらしい。 今や再び殺人狂時代の入口に来てしまった。 どう対応すべきか? 原発労働者たちに語らせ行動させるのだが正に事故現場なので混乱している。 日常の地道な行動も必要だが切羽詰まった対応も緊要だと言っている芝居である。 今朝のニュース「報道圧力」を見ながら舞台に登場したジャーナリストのことを思い出してしまった。 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/64556

■追憶のアリラン

■脚本:古川健,演出:日澤雄介,出演:劇団チョコレートケーキ ■東京芸術劇場・シアターイースト,2015.4.9-19 ■1945年、朝鮮総督府平壌地方法院検事局検事豊川千造は人民裁判で無罪になる。 無罪理由は説明されません。 朝鮮人同僚・友人との良き付き合いが裁判側組織を動かしたと考えるしかない。 個人が組織に影響することを問い直そうとする芝居に見えました。 家族を殺された憎しみが相手民族や国家に広がるのを防ぐにはどうしたらよいか? 夫を日本軍に殺された証人の妻は言っています。 豊川は殺す側の組織の重要な一員だから有罪であると。 しかし組織ではなく個人を優先した。 広がる憎しみを回避する、劇団が出した一つの答えでしょう。 チラシに1868年から1953年迄の朝鮮半島年表が載っています。 この100年があまりにも異常だったことを芝居は思い出させてくれました。 *劇場サイト、 http://www.geigeki.jp/performance/theater080/

■一九一一年

■脚本:古川健,演出:日澤雄介,出演:浅井伸治,岡本篤,西尾友樹ほか ■シアタートラム,2021.7.10-18 ■題名をみて舞台に登場するのは辛亥革命の孫文か青鞜社の平塚雷鳥か? 違いました。 大逆事件の菅野須賀子です。 幸徳秋水は1910年に逮捕され判決は翌年、・・1911年。 配られた資料を読み「予審」の意味と位置づけが分かったところで幕が開く。 主人公は予審判事田原巧という若者らしい。 事件の予審過程が舞台の大部分を占めます。 そこで提出される証拠は不十分にもかかわらず司法組織は嘘で塗り固めていく。 政権と天皇への忖度です。 田原判事は担当者の一人としてその偽りの調書を大いに悩み苦しむ。 そこで奇策を考える。 それは逮捕者26名全員を天皇大権で特赦にすることです。 これには政権へ忖度してきた彼の上司や同僚も賛同する。 逆転かと思いきや、この奇策も政府が先に用意していた!! 結局、幸徳と菅野を含め12名は死刑になってしまう。   菅野と田原が<自由>について議論する場面があります。 菅野は束縛されない強制されない率直な自由論を展開する。 しかし田原は彼女の自由を理解できない。 彼の職業柄や立ち位置から<権利>と<義務>そして<権力>との関係も考えていたのかもしれない。 この議論は途中で有耶無耶になってしまった。 田原判事の予審での熱演は観客に届きました。 観後に知ったのですが1960年代に事件の再審請求があったのですね。 免訴になったようですが酷い裁判だったことが分かります。 しかも権力への忖度は現代も続いている・・。 *劇団チョコレートケーキ第34回公演 *劇場、 https://setagaya-pt.jp/performances/21071911.html

■熱狂

■ 脚本: 古川健,演出:日澤雄介,出演:劇団チョコレートケーキ ■サンモールスタジオ,2013.3.23-31 ■ 「 あの記憶の記録」 の続きと聞いたので新宿へ再び足を運ぶ。 なんと場内は赤いハーケンクロイツ旗で一杯! これで時代順を逆に観ることを知った。 物語はミュンヘン一揆後からヒトラー首相就任迄のナチス組織内の話である。 しかし表面的な政治上の駆け引きに終始し劇が深まっていかない。 指導者原理などの権威を広げ過ぎてしまい舞台に躍動感が無い。  ヒトラーや取り巻き連中の心の襞が見えてこない。 ヒトラーの愛人でも登場するかと期待していたが、一人の女性も登場しないどころか科白にも出ない。 演者の熱演だけが残った観後感である。 「 あの記憶の記録 」 を重ね合わせることで、20世紀戦争の時代が形を変えて今も続いていることを見せてくれた。 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/42846