■Sing a Song

■作:古川健,演出:日澤雄介,出演:戸田恵子,鳥山昌克,高橋洋介,岡本篤,藤澤志帆,大和田獏
■本多劇場,2018.2.7-16
■主人公三上あい子は淡路のり子に似ている。 とは言っても彼女をよく知りません。 舞台上の三上は音楽のプロだと分かります。 「人を死に追いやるような歌は歌ではない。 だから絶対に軍歌は歌わない」。 この100年の、音楽の真髄です。 小津安二郎を思い出してしまった。 二人の表現や立場は違いますが彼は軍服を絶対に撮らなかった。
ストーリーの先読みのできる作品ですが中村軍曹のジャズ好きが皆にバレる所から分からなくなる。 しかし彼のジャズ好きと三上の鞄持ち成田が旅順攻囲戦の生き残りという二人の趣味戦歴が物語を過激にさせない防波堤のようです。 長内大将の切腹や葛西中将の敗戦の弁が表面的になってしまったのも致し方ない。
沖縄へ特攻機が出撃していくのをみて三上は歌えなくなり泣いてしまう。 成田はそれをみてプロではないと諫めます。 それでも舞台の素晴らしいのは、歌手三上あい子の憲兵をも物ともせず歌への強いおもいで難局を乗り切っていく姿でしょう。 高齢客からすすり泣きも聞こえましたが自身の歴史と重ねてしまうのかもしれません。
第28回下北沢演劇祭参加作品
*CoRichサイト、https://stage.corich.jp/stage/89895