■ヒッキー・ソトニデテミターノ

■作・演出:岩井秀人,出演:ハイバイ
■東京芸術劇場・シアターイースト,2018.2.9-22
■「引きこもり」支援施設の日常を描いた舞台です。 十年以上も家に引きこもっている鈴木太郎と斉藤和夫の二人に焦点をあてて物語が進む。 施設職員森田冨美男も元ひきこもりです。 太郎には親子関係の失敗がみえますが和夫の心の内はよく分からない。 二人は自身が完璧でないことに負い目を感じて外に出られない設定になっている。 しかし完璧さは人生の罠です。 ・・そして二人は支援施設から社会へ飛び立つ。
ストーリーから逸れますが・・、太郎の父の新しい上司である中国人女性がいつのまにか施設職員に変身する場面は驚きです。 声だけで時空と役者間を移動してしまうのは凄い。 演じたのはチャン・リーメイです。 このような感心する場面が多々あり役者の立ち位置や小道具の使い方、そこに被さる時間空間の処理は完璧です。 そしてリアルな生活を暴き出すさり気ない対話が続くから唸ってしまいます。
演出家は「世界の正しさに勝てないと勝手に思い込んでいる人達」と「世界に抗うのをやめた人達」の両方を描きたいと言っている。 正しさよりドロドロした人間関係の煩雑さもこれに加えたい。 社会に出ていけた人は抗うのを止めるのではなく、世界に馴染んでいくのだと思います。
それにしても太郎と和夫は優等生過ぎる。 太郎は両親から離れればよい。 和夫は古舘寛治が演じていましたが彼には独特な役者個性が滲んでいる。 この舞台では老練過ぎて引きこもりと言うより仙人に近かった。 これで和夫の自殺は予想外になってしまった。 冨美男を演ずる岩井秀人も抑えが効いていて巧い。 久しぶりに面白い舞台に出会えたという感触が残りました。
*劇場、http://www.geigeki.jp/performance/theater167/