■ST/LL

■総合ディレクション:高谷史郎,出演:鶴田真由,オリヴィエ・バルザリーニ,平井優子,薮内美佐子,音楽:坂本龍一ほか,照明:吉本有輝子,音響:濱哲史,グラフィック・デザイン:南琢也
■新国立劇場・中劇場,2018.2.24-25
■床には水が張り巡らされているの。 机の上にはワイングラスや金属皿、赤い林檎や黄色いメトロノームがみえる。 天井の移動カメラが背景のスクリーンに机上を映し出していく。 次に食器類を片づけてダンサーが机にのりそれをカメラが追う・・。
シャープな舞台ね。 映像とダンサーの寒暖関係が素晴らしい。 微妙にズレているようにもみえる。 西欧の物質観を感じさせる実験映画を観ているようだわ。 でも張った水を歩く女性ダンサーの動きに日常が見えてしまい緊張が崩れる。 たとえば机を動かす場面もね。 水の抵抗に負けているからよ。
後半ダンサーたちは舞台を動き回り始める。 背景映像も食器や書物の落下を挿入しながらダンサーと同期・非同期を繰り返していく。 オノマトペのような詩の朗読もあるの。 音楽は空白が多くて控えめだけどダンサーを引き立てていた。 そして再び机を使って静かに幕が下りる。
配られた解説に「・・相対性理論的、あるいは量子的世界観へ接近」と坂本龍一が書いているけどそれは感じる。 ダンサーと映像や映像間の微妙な揺れからもね。 水と油の相対論と量子論の融合かしら。 この二つの境界で生命体としてのダンサーが無関心を整いながら動き回っている。 深読みが必要な舞台だった。 カーテンコールで拍手が弱かったのも観客は楽しむ前に考えてしまったからよ。
*NNTTダンス2017シーズン作品
*劇場、http://www.nntt.jac.go.jp/dance/performance/33_009655.html