■密会

■作:大竹野正典,演出:日澤雄介,出演:稲荷卓央,清水直子,岡本篤
■ザスズナリ,2014.8.14-18
■幕開きのシーンが再び終幕にも繰り返される。 男1が殺人を実行に移す場面である。 そして舞台のすべてが殺人迄の過程をフラッシュバックのように物語っていく。 断片を寄せ集めたような構成である。 場面の非連続な切替が印象的である。  映画の技法を採用しているようだ。
男1は就職で躓いている。 被害妄想も強い。 そして最後は殺人を犯すストーリだが、どうも戴けない。 職が得られない辛さは伝わるが、殺人に結びつく演劇的感動が迫ってこないからである。
作者も「事件」を題材にすることの困難さをチラシで言っている。 「言葉を重ねていった果てに現出する世界がどれほど不条理で不可解なのか・・」。 一つの不条理劇にしたいようだ。
この芝居に欠けているのは存在の不思議さだと思う。 男2(藤井びん)、男4(岡本篤)はこれを気にしていたようにみえた。 しかし男1(稲荷卓央)はこれを気にかけない。 就職と被害妄想という、世界への対応と言葉の応酬が優先されすぎたからである。 存在の辛さを表現できれば演劇的感動に近づけたかもしれない。