■海神の社、ワダツミノヤシロ

■作・演出:野中友博,劇団:演劇実験室紅王国
■ウッディシアター中目黒,2017.2.22-28
■舞台は中央に神棚があり壁には紙垂が下がっている。 20世紀初頭の淡島の漁村が舞台です。 漁民の多くは海の守護神である淡島綿津見神社(わたつみじんじゃ)を信仰している。 他に隠れキリシタンもいる。 そこへ天照大神を祭神とする国家神道の神祇官が内務省から派遣されてくる。 天皇家祖先神以外を拒否する派遣神祇官と村の神職や隠キリシタンの間で争いが起きるが海神が登場し混乱を鎮める話です。 しかし時すでに遅く、戦争が迫るなか漁民たちにも召集令状が来て彼らは戦場へ向かうことになってしまう。
宗教に疎いので意味が分からない台詞も多くあったが面白く観ることができました。 演出家はキリスト教信者らしい。 彼の分身である教授葛城は信仰の自由を語り、民を結集するため宗教が国家と結びついていく時代を危惧する舞台になっています。 八百万神の神道を一つに集約し世界の一神教と対峙させるのが国家の狙いでしょう。 因みに舞台に仏教は登場しない。 たぶん「神」を重視しないので議論し難いのかもしれない。 この劇団は初めて観たのですが宗教を題材にすると芝居の核心に近距離で迫れますね。 宗教と舞台芸術は同根だからでしょう。
*劇団サイト、http://www5e.biglobe.ne.jp/~kurenai-/wadatsumi-promo.html