■たくらみと恋

■作:F・V・シラー,演出:L・ド-ジン,劇団:マールイ・ドラマ劇場
■世田谷パブリックシアタ,2017.2.18-19
■舞台はなにもない空間から始まるが、ストーリーに合わせて脇役が椅子や机を運んでくる。 終幕ではいつのまにか宴会用の机が並べられキャンドルや花が置かれてドイツ大公の結婚式場になる。 修飾の少ない科白が観客を舞台に集中させる。 それは美術・照明・音楽にも現れている。 衣装はモノトーンで統一され役者の歩き方はロボットのような正確さがある。 あらゆる無駄を省いているようだ。
しかし幕開きの娘ルーゼが歩き回りそこへ大臣の息子フェルディナンドが飛び込んでキスをする場面は躍動感があり素晴らしい。 それと大公愛人ミルフォードが登場して数回机上で踊るのだが動きに違和感がなくて感心した。
秘書ヴルムをフェルディナンドが銃で脅す場面、ルイーゼの父ミラーがフェルディナンドからカネを渡されるところなどは緊張したいが突飛に始まり深まらないで宙づりにさせられる。 ルイーゼにミルフォードが過去を話す場面は一番の見どころだった。 そしてフェルディナンドがレモネードにヒ素を入れてルイーゼに飲ませるクライマクスには驚きである。 彼の性急な行動が突然芝居を終わらせてしまう。 企みも恋も膨らまなかったホットケーキのようだ。 いや最初からパンケーキだったのかもしれない。
役者はしっかりしていてさすがドラマ劇場だけはある。 肉を剥ぎ取り骨で勝負している感じだ。 ソビエトを引きずっている30年前の芝居を観ているような感覚もあった。
*劇場サイト,https://setagaya-pt.jp/performances/201702takuramitokoi.html