■蝶々夫人

■作曲:G・プッチーニ,指揮:P・オーギャン,演出:栗山民也,出演:安藤赴美子,R・マッシ,演奏:東京交響楽団
■新国立劇場・オペラパレス,2017.2.2-2.11
■ローマ建築のような長い階段と壁に映る人影、そこに日本人歌手が登場してどこか和洋折衷の面白さがある舞台だった。 いつもの蝶々夫人とは一味違う。 日本人歌手の歌唱からは背景にある日本100年生活史の匂いが次々と湧き起こってくるの。 例えばピンカートンに見せる蝶々の大事な小物一つ一つに付着している意味、僧侶ボンゾの改宗より共同体から外れていく非難、その続きにある青い目の子供への差別、そして芸者としての座敷での芸妓の苦しみの話等々。 観客の雰囲気に湿り気感があったのはこの為よ。
ピンカートンが登場する時の舞台奥にたなびく星条旗が強すぎる。 蝶々は米国の法律や契約を論ずるがそれは生活からみた違いからなの。 星条旗は国家を思い出してしまい蝶々の「クニ」とは落差が大きい。 それは彼女を苦しめ且つ観客も戸惑ってしまう。 でもこの生活の重みでソプラノ殺しの歌唱が冴えていた。 「歌唱はドラマの流れに沿って、感情の流れとともにあるのが理想」。 安藤赴美子のインタビュー通りね。 そして子供の使い方も上手かった。 これで蝶々が我が子に語る最後の歌詞も母としての重みが出ていた。
*NNTTオペラ2016シーズン作品
*劇場サイト、http://www.nntt.jac.go.jp/opera/performance/151224_007958.html