■メディア

■作:エウリピデス,演出:レオニード・アニシモフ,劇団:東京ノーヴイ・レパートリ-シアタ-
■TNRT,2016.2.16-25
■役者は顔の中心だけを白塗りにしている。 「アンティゴネ」と同じだ。 この白塗りは神妙不可思議な世界に連れて行ってくれる。 ただしメディアと乳母は塗っていない。 そのメディアは四つ這いで舞台を這い回り一度も二本足で立たない。 みつめる9人のコロスは遜色のない存在感で物語を区切っていく。  
王クレソンと夫イアソンは舞台では出会わないし王娘グラウケも登場しない。 その分を含めてメディアと王クレソン、夫イアソンとの対話は簡素だが核心をついている。 メディアはイアソンの行動を一度は肯定するが結局はクレソンとその娘を毒殺し自身の息子二人も手にかける。 しかし彼女の血肉を伴う感情は欠片もみえない。 復讐心の凄まじさが静かに伝わってくるだけである。 事件は語られるだけだ。 メディアの叫びは静寂な空間に響いていくだけである。
*第27回下北沢演劇祭参加作品
*劇団、http://tokyo-novyi.muse.weblife.me/japanese/pg553.html