■お勢登場

■原作:江戸川乱歩,作・演出:倉持裕,出演:黒木華,片桐はいり,水田航生,川口覚,粕谷吉洋,千葉雅子,寺十吾,梶原善
■シアタートラム,2016.2.10-26
■乱歩8作品のオムニバスだが迷路のように繋がっている。 時代が前後しながら主人公お勢が姿を変えて登場します。 お勢は同一人物なのかよく分からない。 お勢のような女はどの時代にも保護色を纏い生活していたのだという話にみえる。
彼女は本心をあまり見せない。 盲老人を穴に落とす場面も衝迫過ぎて心の内が掴めない。 彼女の全体像は周囲にいる人々のイメージから形作られていきます。 この作品で一番の推理どころかもしれない。
「押絵と旅する男」を初めて読んだ時のゾッとする感じが伝わってこない。 乱歩の怪奇や幻想、推理からくるゾクゾク感は薄い。 でも8作品を上手く混ぜた面白さは出ています。 再構築していく作業で演出家が一番楽しめたのではないでしょうか。
*劇場サイト、https://setagaya-pt.jp/performances/201702osei.html
*追記17.2.15、ブログを書き終わったあと劇場でもらった「せたがやアーツプレス」を読んでいたら演出家と黒木華が「退屈」について話していた。 そういえば演者が退屈だと何回か言っていたのを思い出した。 近頃は雑音のような退屈ばかりで本当の退屈を忘れてしまっていた。 「退屈」を耳にしても素通りさせてしまったらしい。