■暗愚小傳

■作・演出:平田オリザ,出演:青年団
■吉祥寺シアタ,2014.10.17-27
■幕開きから舞台に入っていけない。 やたら茶を飲んだり煎餅や饅頭を食べるからである。 近頃こういう場面が多くなっているようだが? 飲食し過ぎると中身が良くても中途半端に見えてしまうから困る。 しかも役者たちがニコニコし過ぎている。 それと机が小さいためか溢れた椅子が舞台端においてある。 役者がズレた位置に座るため微妙な距離の違いを気に掛けてしまう。 この劇団では致命的とおもわれる。
お茶が少なくなりやっと調子がでてきたようだ。 荷風の作品は読んでいるが、高村光太郎と智恵子はよく知らない。 詩や戦争責任を論じているが二人の下調べをしておけばよかったと後悔した。 後半の光太郎は科白が少なく椅子を積み上げたり馬乗りをする。 悪くはないがオリザ風劇的さが現れていない。 荷風はイメージに合わないところがあったが若すぎたからだろう。 そして宮沢賢治はいつも風呂あがりのような表情をしているのが楽しかった。
しかし当時の社会状況や近所の話題が物語から浮いてしまっている。 智恵子の死は感動的だが、ほかの人の死が遠くにみえる。 理由はうまく言えないが、やはり役者たちの存在感が軽かったからである。 対話の間が生きていなかった。 細かいことだが役者たちの入退場も雑であった。
その中、後ろ姿で座る本間春子は重みがあった。 永井のセリフ「本間は夏木が好きだったのでは?」は席から見ても感じられたからである。 
演出家の「再演にあたって」を読むと「・・思い入れの強い作品」とある。 観客からは見えないことが沢山ある作品なのだろう。 チラシの富士に鶴と鴨もいつもと違い意味深であった。
*劇場サイト、http://www.musashino-culture.or.jp/k_theatre/eventinfo/2014/06/post-25.html