■世界は嘘で出来ている

■作・演出:田村孝裕,劇団:ONEOR8
■スズナリ,2014.10.21-29
■舞台は古くて汚い貸家の室内ですが面は通りになっています。 上手から役者が登場し面の道を歩いて下手の玄関に出入りします。 退場もこの道を通る場合が多い。 よくみる構造ですが小さな劇場の割には巧く出来ていました。
貸家住人孝行が亡くなりますが、特殊清掃会社の兄滝口が部屋の後始末にあたります。 この兄弟と周囲の人々を描いた物語です。
話は場面が切り替わるごとに過去へ戻っていきます。 現「場面」の小道具や役者の一部を残して次「場面」に繋げる手法を採っています。 この為すべての場面が一つにまとまっている感じがします。
病気持ち?で職に就かない弟を兄や母は思いやるのですが弟の心情が読めません。 夜の仕事の母や零細企業社員の姿は貧困一歩手前の現実がうまく描かれていて舞台に引き込まれてしまいます。 終幕兄は弟の亡くなった状況を母に知らせるのですが、仰向けで頭を枕に乗せて安らかに息を引き取ったと<嘘>を言います。
「世界は嘘で出来ている」は嘘も本当も結局は同じことだと解釈していました。 ですから「嘘」と「本当」の差を意識し過ぎて苦しむ弟や母に「嘘」を付いて泣き崩れる兄は日常世界の良き住人です。 このような世界を基にした作品を観るのは久しぶりの為かいつもと違った感動を得られました。
*劇団サイト、http://oneor8.net/pg104.html