■「て」

作・演出:岩井秀人,出演:ハイバイ
東京芸術劇場・シアターイースト,2013.5.21-6.2
この演出家はカラオケの使い方がとても巧い。 父が歌う場面では物語の地に柄が浮き出た状態になる。 あと一歩で崩れてしまう人間関係や日常生活である地を一端止揚するからである。 歓喜を伴い全員で歌う別場面も一瞬あったが、ここは異化効果が発揮できていなかった。 ナゼできなかったのかを追求しても面白いとおもう。 本来なら劇的さを伴う場面だから。
同じ物語と舞台が点対称で前半と後半に繰り返される。 補完しながらである。 この構造も面白い。 観客は二度観て二度考えてしまう。 というより半分ずつ非連続で観て、これを重ね合わせて一つの物語にする感じだ。 でも観客にとって意味が有るのだろうか? この構造は演劇的感動を半分づつにするようなものだからである。 感動は分けられない。