■誤解

■作:アルベール.カミュ,翻訳:岩切正一郎,演出:稲葉賀恵,出演:原田美枝子,小島聖,水橋研二,深谷美保,小林勝也
■新国立劇場.小劇場,2018.10.4-21
■「ホテル経営の母娘が客を殺して金品を奪う・・」。 公演チラシに目を通して劇場に向かいました。 しかし客のジャンは登場するなり自分がここの息子だと観客だけにバラしてしまった。 謎はなくなり、母と妹は彼の素性をいつ知るのか?彼は殺されてしまうのか?等々を考えながら観ていくことになります。
その夜、母娘はナンダカンダ言いながら客である息子を殺してしまう。 二人は彼のパスポートを見て驚くが、しかし母は感じ取っていた。 「いつかはこうなると分かっていた・・」。 母は「母と娘」と「母と息子」の愛の違いを娘に話して息子の後を追う。 娘マルタは母に捨てられたと嘆き悲しむが、それに続くモノローグが長い。 この独白場面での彼女の科白が思い出せないためブログをどうまとめてよいのかわからなくなってしまった。 終幕、息子の妻マリヤがホテルに訪ねるのだが彼女もマルタを理解できない。 粗筋からギリシャ悲劇を思い出すが、観終わった時に同じようなカタルシスがやってきません。 
やはりカミュは輝く太陽の下での衝動的殺人が似合っています。 薄暗い空の下での計画的殺人を実行する娘マルタがこの状況からどれほど逃げたかったか作者が一番知っていたのではないでしょうか? この作品は空の色に比例するかのように、とても暗い硬いカミュ的不条理が漂っています。
大きな布が空間を仕切り包み込む美術は直截な照明と共にシンプルな舞台を作り上げていて役者に集中できました。 使用人小林勝也の存在も面白かった。 でも彼の少ない科白で「神」を出現させたのには驚きでした。
*NNTTドラマ2018シーズン作品
*劇場サイト、https://www.nntt.jac.go.jp/play/performance/16_011666.html