■フィデリオ

■作曲:L・V・ベートーヴェン,指揮:飯守泰次郎,演出:カタリーナ・ワーグナー,出演:リカルダ・メルベート,ミヒャエル・クブファー=ラデツキー,ステファン・グールド,妻屋秀和ほか,管弦楽:東京交響楽団
■新国立劇場・オペラパレス,2018.5.20-6.2
■古ぼけたビルディングが舞台一杯に建てられている。 それを縦割りにして部屋々や牢獄が見える。 上階の歌手は見上げるようね。 そして演奏が始まった途端、あのベートーヴェンが牢獄に居る気配を感じたわよ。 迫りくる重圧・・。
最初は演出家の意図がみえなかったの。 娘マルチェリーネのままごと遊びもね。 おカネの話も沢山でてくる。 その現実が監獄の暗さと溶け合ってベートーヴェンの苦悩に繋がっていく。 素面な対話が途中に入るから拍手もできない。 呼吸をするタイミングも取れない。 歌手も下に向かって歌うからそれにつられて呼吸まで意識するのね。
でもビルディング1階(牢獄)からのフロレスタンの最初の一声は暗さを突き破った。 そして終幕の賛歌へと近づいていく。 まさに第九の合唱よ。 ステファン・グールドもリカルダ・メルベートも滑らず重みの有る声で締めくくったわね。 地下牢の囚人合唱団も迫力があった。
それにしても、なんてゴッツイ作品なんでしょう。 ストーリーも粗過ぎる。 謎も無い。 「偉大なベートーヴェンに慣れてしまったが・・、その奥へ迫りたい!」と指揮者は言っていたけど、ベートーヴェンの心の在り様がそのまま舞台に出現していた。
*NNTTオペラ2017シーズン作品
*作品サイト、http://www.nntt.jac.go.jp/opera/fidelio/