■1984 -ビッグブラザーは見ている-

■原作:ジョージ・オーウェル,脚本:ロバート・アイク他,翻訳:平川大作,演出:小川絵梨子,出演:井上芳雄,ともさかえり他
■新国立劇場・小劇場,2018.4.12-5.13
■読書会で幕が開く。 劇中劇の外枠ようだ。 内枠は主人公ウィンストンの夢にもみえる。 入れ子にした時間軸の隙間からその夢?が時々滲み出ている。
大杉漣の死去で神農直隆に替わっていたが二人は似ている。 兄弟のようだ。 数日前に「アウトレイジ最終章」を観たが、生き埋めにされ車に引かれ壮絶な死に方をした大杉漣を、舞台をみながら思い出してしまった。
出来上がってしまった全体主義を描いている前半は盛り上がらない。 それより現実で起きている例えば選挙に流れたフェイスブックのデータ不正利用疑惑事件の方がより不気味である。 全データをクラウドに上げ物品購入を含め自身の情報を全てGAFAに預けている為でもある。 メールの全スキャンも国難という一存で実施するだろう。 企業と顧客の所有概念、国家と企業のグローバルな関係性が崩れつつある。 80億人一人一人管理は既に可能になっている。 「ビッグブラザーは見ている」ではなく「ビッグデータで見ている」が現実を蔽い始めている。
舞台に戻るが、拷問室から面白くなってくる。 子供の密告をパーソンズが何度も口にするのもボディブローのように効いている。 ウィンストンとジュリアの破局も拷問の結果だが物語のヤマである。 鼠を使った拷問は哺乳類の共食いだから器具とは違う恐ろしさがでていた。
全体主義が芽生えるのは日頃の疑心暗鬼が積み重なっていくからである。 現代は情報の不正操作と情報の隠蔽がその引き金になる。 <敵>を必要とする全体主義はそれを助長し成長していく。 21世紀にそれはとても芽生え易い。
*NNTTドラマ2017シーズン作品
*劇場サイト、http://www.nntt.jac.go.jp/play/performance/16_009661.html