■怒りをこめてふり返れ

■作:ジョン・オズボーン,翻訳:水谷八他,演出:千葉哲也,出演:中村倫也,中村ゆり,浅利陽介,三津谷葉子,真那胡敬冶二
■新国立劇場・小劇場,2017.7.12-30
■LDK一部屋だけの奥行ある舞台は距離感が掴めなくて目眩がする。 大きな倉庫を改築したような感じね。 でも幕が開いたとき登場した役者が巨人のようにみえてビックリ! 慣れるまで時間がかかったわ。
ジミーが怒っている理由が解らない。 とにかく怒りっぱなしなの。 同居人はこれに慣れているみたい。 女優ヘレナが登場してからジミーの怒りの中身が少し見えてきた。 彼は思っていたより正面だということが。
そして彼は父親が亡くなった時の話をするの。 一人で父を看病したこと、ちゃんと葬儀をしたこと等々をね。 そしてここが怒りの発生場所だったことを彼自身が話すの。 でも理解も納得もできない。 新たな疑問よ。 次に病気で倒れた友人の母を見舞いそして葬儀をしてくる彼はとても律義のある人にみえる。 しかも彼は供花も送らない妻アリソンに不満をもらす。 教会の鐘は煩いと言っていながら宗教のある面は保守的にみえる。 階級についても制度で人々が固まってしまった考えや行動に対して怒っているようにみえる。 彼が妻アリソンを見初めたのは彼女がその中で自由にみえたからなの。 彼は制度そのものより運用や方法にケチを付けているみたい。 終幕、妻アリソンとの仲直りも今ある制度の中で慎ましくそして怒りながら生きて行こうとするようにみえてしまった。
この一線を越えないのが帝国崩壊や階級格差の1950年代英国を生き抜く知恵だったのかもよ。 制度と自由への彼の考え方だとおもう。 そして新聞とラジオだけのゆるやかな情報とロンドン近郊の田舎暮らしそれにキャンディ売り(?)がそれを可能にした。
登場人物5人は夫々の持ち味が生きていてとても楽しく観ることができたわ。 役者の個性も際立つ作品ね。
*NNTTドラマ2016シーズン作品
*劇場サイト、http://www.nntt.jac.go.jp/play/performance/16_007983.html