■子午線の祀り

■作:木下順二,演出:野村萬斎,音楽:武満徹,出演:野村萬斎,成河,河原崎國太郎,今井朋彦,村田雄浩,若村麻由美ほか
■世田谷パブリックシアター,2017.7.1-23
■前半の平知盛と親族や部下との議論や駆引きが楽しい。 舞台に吸い込まれてしまった。 同時に衛星としての月の話や舞台背景の北斗七星その先の北極星を眺めていると源平合戦が小さな塵のようにもみえてくる。 宇宙を感じさせてくれる作品である。
後半、壇之浦の戦いに入っていく。 義経(成河)の身体性を伴う早口の声が気持ちいい。 動機として声が源氏の立ち位置をはっきり現わしていた。 しかし話が進むほど緊張感が逃げていくのは何故だろう? 戦闘場面の解説が多くて科白が単純になってしまったからだとおもう。 もう一つ知盛(野村萬斎)が声にこぶしを効かせてしまったのがいけない。 調子が出過ぎたようだ。 淡々と演ずるのがいい。
この芝居は「山本安英の会」で観た記憶がある。 今回は役者の動きが激しかったせいか終幕の影身(若村麻由美)の言葉で宇宙の静と人の動の対比の遠さを面白く感じ取ることができた。 作品の良さを引き出したダイナミックな演出だった。
*世田谷パブリックシアター開場20周年記念公演
*劇場サイト、https://setagaya-pt.jp/performances/201707shigosen.html
*「このブログを検索」キー、 野村萬斎
*2017.8.2追記。 夕刊に池澤夏樹の記事が載っていた。 「古川日出夫訳にしたらどうか?」 現代訳に近いので観客はついていけそうだが。 「月の運行や愛馬の話で項羽本記を思い出した・・、平家物語の作者は史記を参照したのだろう」。 「この作品は左翼のルサンチマンがちらつく。 ・・大杉栄や荒畑寒村、管野スガの「冬の時代」をみたい」。 なるほど。