■ザ・スーツ

作:キャン・センバ,演出:ピータ・ブルック
パルコ劇場,2013.11.6-17
まるで能舞台のようだわ、といってもブルック流のね。 ギターやアコオデオン・トランペットは囃子方。 音楽の比重が高いのも似ているの。 スーツとのダンスもシテの舞のよう。 衣服に意味をこめるのも能の話によくある。
妻の不倫を夫が許さない。 許して忘れろと友達から言われた夫は妻の元に急ぐが時すでに遅し。 妻は自死してしまう。 時代はアパルトヘイト時代のヨハネスブルクで俳優はすべて黒人。 洗練された明るい日常的衣装がとても似合っている。
まさにグローバル演劇だわ。 世界共通の話題である人種差別と愛する人の不倫をシンプルな舞台にして提供しているからよ。 そして国や人種を越えた抽象性のある感動を持っているの。 ブルック流世界の素晴らしさね。
しかも観客への目配りが多くて役者たちと親しみの有る対話をしているみたい。 パーティ場面ではなんと数人の観客を舞台に招待したの。 この劇場は舞台と観客の距離が近いこともあるから俳優との一体感はいつも以上だった。
*作品サイト、http://www.parco-play.com/web/play/suit/