■東海道四谷怪談

作:鶴屋南北,監修:木ノ下裕一,演出:杉原邦生,出演:木ノ下歌舞伎
あうるすぽっと,2013.11.21-24
黒白縦縞の薄汚い傾斜舞台はとても観やすい。 江戸時代に現代を被せたような舞台である。 小道具は江戸、衣装は今風だが刀を差している。 喋りは江戸と現代が混ざり合っている。 ラップミュージックもある。
二組の夫婦が二つの焦点にいるようだ。 物語が周りの楕円曲線上に描かれていく。 一焦点にお岩と伊右衛門そしてお梅、もう一焦点にお袖と与茂七そして直助がいる。 二組とも三角関係だ。 お袖とお岩の澄んだ声に女の悲哀が込められていた。
一幕は二組夫婦の展開。 二幕はお岩の狂乱と死。 三幕はお袖と直助の死。 そして伊右衛門と与茂七のチャンバラで幕が降りる。 上演時間が6時間もあったがスピード感があるので長く感じさせない。
お岩の醜顔や怨霊も物語の一部として組み込まれ影が薄い。 四谷怪談も忠臣蔵も背景でうごめいているようだ。 ポストトークで木ノ下も「これは群集(像?)劇である・・」と言っていたが、なるほど。
群像劇はあとからズシンと感動が来るのだが、しかしこれが弱かった。 どの場面も現代との距離が意識に上ってしまったのが理由である。 群像劇は結果として舞台上で一つの時代を形作らなければ感動が来ない。
三幕では構成を変えて、役者を周囲に座らせ中で演技をする方法を取っていた。 長時間の為変化を取り入れたのだとおもう。 面白いが前幕迄のリズムを崩してしまったのは勿体無い。 通し上演の難しさだろう。
*F/Tフェスティバルトーキョー2013参加作品