■善人はなかなかいないっぽい
■作・演出:金子鈴幸,出演:川島潤哉,夏アンナ,hocoten他,劇団:コンプソンズ
■スズナリ,2026.10.15-20
■新潮九月号の「令和演劇ニューウェーブ」でコンプソンズを知り、ちょうど下北沢で公演中であったことから、早速「善人はなかなかいないっぽい」を観劇した。
舞台では、友人や職場での人間関係や恋愛など若者たちの日常が描かれる。 役者たちの表情や身体表現、テンポのよい台詞の応酬が観客の笑いを誘っていた。 一つ一つの場面でエピソードを積み重ねながら作品世界を形づくっていく。
ところが物語は途中から思わぬ方向へ展開する。 異世界的な要素が導入されるだけでなく、劇中劇が挿入され、さらに観客と舞台の境界を曖昧にする仕掛けや、<岡田利規>の登場によって、演劇そのものを主題化するメタ演劇の様相を帯びていく。 その自由奔放な発想には驚かされる一方で、作品の焦点が次第に拡散していく印象も受けた。
しかし、その複雑な構造の背後には父と子の関係が見え隠れしている。 随所に作者自身の少年時代の記憶や体験が投影されているようにも感じられた。
本作は劇団結成十周年記念公演とのことであるが、その節目にあたり、演出家がこれまでの人生や演劇活動を振り返り、それらを一つの舞台に凝縮しようとした作品なのかもしれない。
結果として、本作には興味深い要素が数多く盛り込まれていた反面、それぞれが十分に整理されないまま並置されているようにも感じられた。 細部の取捨選択を行い、作品全体のベクトルを明確にした方が、より強い印象を残したのではないだろうか。
ただし、その奔放さこそが劇団の持ち味である可能性もある。 今回だけでは判断できず、今後さらに数作品を観てみたいと思わせる劇団であった。
*コンプソンズ10周年記念作品