■イタリアのトルコ人

■作曲:G・R・ロッシーニ,指揮:アレッサンドロ・ボナート,演出:ロラン・ペリー,出演:アレハンドロ・バリニャス・ビエイテス,クラウディア・ムスキオ,パオロ・ボルドーニャ、ルジル・ガティン,但馬由香ほか
■新国立劇場・オペラパレス,2026.10.2-12
■初めて目にする作品名だった。 しかも、チラシに記された情報だけを頼りに劇場へ向かったのがよくなかったのかもしれない。
前半は、私が期待していたようなロッシーニ独特の軽妙な雰囲気に十分浸ることができなかった。 劇中劇の設定がやや中途半端に感じられ、挿入されるフォトノベルも集中力を分散させる。 さらに大胆な恋の駆け引きが続くなかで、主人公フィオリッラの夫ジェローニオの扱いはあまりにも惨めである。 「イタリアの男はここまで我慢するのか」と思わず驚いてしまった。 しかし、これはイタリア喜劇なのだと割り切って受け止めるべきなのだろう。
これに沿って後半の仮装舞踏会の場面に入ると、ようやく作品の面白さに乗ることができた。 ロッシーニならではの早口言葉、次々に繰り出される独唱や重唱が続き、音楽の勢いに引き込まれていく。 最後にはジェローニオが離婚をほのめかすものの、フィオリッラは実家の両親まで持ち出して夫婦関係の修復を図り、イタリア喜劇らしい大団円のうちに幕となる。 まさに「終わりよければすべてよし」の作品であった。
出演した歌手たちはそれぞれ個性が異なっていたが、その多様さもまた、この喜劇によく似合っていたと思う。 舞台上を飾る写真はヌーヴェルヴァーグ時代の映画ポスターを思わせ、歌手たちの衣装や佇まいからは、どこかイタリアの往年の日常風景が連想された。
全体としては実にばかばかしく、荒唐無稽な物語である。 しかし、その一方でどこか懐かしいイタリアへの郷愁も感じさせる、楽しい舞台だった。 この作品の魅力は、映像やあらすじだけでは伝わらない。 劇場で音楽と笑いの渦に包まれてこそ、身体的な実感として味わえるものであろう。
*NNTTオペラ2026シーズン作品.