■出口なし

■作:J・P・サルトル,演出:小川絵梨子,出演:大竹しのぶ,多部未華子,段田安則,本多遼
■新国立劇場・小劇場,2018.8.25-9.24
■大竹しのぶの生舞台は初めてである。 ジャンヌ・モローに似た立ち振る舞いで興味を持ち一度は観たいと思いながら今日に至ってしまった。 彼女が出演した作品や演出に関心が向かわなかったこともある。 今回はサルトルだから期待とともに不安もある。
照明が灯ると背景の赤いビロード風カーテンが先ずは目に染まる。 三つのソファーを包む空間も異様だが圧迫感が天井へ逃げている。 「出口がある」と言っているようにみえる。 作品をポジティブに取ろうとする演出だろう。
ガルサンにもそれが乗り移っている。 エステルも「地獄なんて知らない」雰囲気だ。 二人の声が科白を楽観的にしているのかもしれない。 反してイネスが中途半端だ。 迷っているようにみえる。 二人と比して存在感も薄い。 不安が当たってしまった。
ガルサンの科白「他人は地獄だ」が日本的な関係の意味合いに聞こえてしまった。 3人の台詞が声になると日本化されてしまい世界へ出られない。 この意味で「出口なし」といえる。 サルトルではなく「さるとる」のような舞台だった。 それは現代日本を暗示している。
ところで舞台下手の胸像付近では役者の声が響いて聞こえた。 たぶんマイクのせいだろう(?)。 この作品に合わないし小劇場では生身の声を聞きたい。 ジャンヌ・モローとの再会は又にしよう。
*「出口なし」(寂光根隅的父演出,2017年)
*「出口なし」(白井晃演出,2014年)
*シスカンパニーサイト、http://www.siscompany.com/deguchi/gai.htm