■シラノ・ド・ベルジュラック

■作:エドモン・ロスタン,台本:マキノノゾミ,鈴木哲也,演出:鈴木裕美,出演:吉田鋼太郎,黒木瞳,大野拓朗ほか
■NHK・Eテレ,2018.9.8(日生劇場,2018.5収録)
■吉田鋼太郎の挨拶が最初に入る。 テレビ用編集だが彼の意気込みを感じる。 蜷川幸雄の舞台は近年ご無沙汰だったので常連俳優である彼のことはよく知らない。
・・物語の風景描写が続いていくが1幕終わりから舞台に集中できるようになる。 シラノがロクサーヌに宛てた韻文形式の恋文を科白として声に出す構造が面白い。 それが操り人形の糸のごとくロクサーヌとクリスチャンを動かしていく。 韻文とクリスチャンの無垢な性格の対比が舞台を楽しくしている。 恋愛における理論と実践の落差からだろう。 しかしロクサーヌはこの理論を受け止めるだけである。 彼女の立場は理解できるが影が薄くなるのはやむを得ない。 戦場に食料を届けるなど作者も苦労している。
そして終幕、修道院の庭にシラノが登場するのも頂けない。 彼はこの前にサッパリ退場するのが筋だとおもう。 ロクサーヌだけの修道院なら彼女が語る総括がとても生きてくるはずだ。
この作品は過去に鈴木忠志演出を観て甚く感動した記憶がある。 今回の鈴木裕美演出もまったく違う面白さがあった。 吉田鋼太郎の熱演もとてもいい。 彼は即興ができる役者である。 微細な振動を内包しているので瞬間的な判断を迷わない。
*CoRich、https://stage.corich.jp/stage/90666