■イェルマ

■原作:フェデリコ.ガルシーア.ロルカ,演出:サイモン.ストーン,出演:ビリー.パイパー,ブレンダン.カウエル他
■東宝シネマズ日本橋,2018.9.28-10.4(ヤングヴィック劇場,2017.8.31収録)
■上演前のインタビュー映像で演出家と評論家の対談があったが珍紛漢紛でした。 そのはずでこの作品は現代の出産の葛藤を描いていたからです。 保守的な共同体で子宝に恵まれず主人公が悩む話だと思っていたら大違い(?)。
ヤングヴィック劇場内は客席を両端に分け中央舞台にガラス箱を組み立て役者はその中で演技をしているようです。 映画ではガラスを意識しないが、役者が寄り掛かったり継ぎ目の所に来るとガラス壁があったのだと思い出します。
イェルマ(彼女)と夫ジョンの対話は具体的で際どいセックスの話が多い。 この舞台の見所ではないでしょうか。 でも出産に繋げているので多くは嫌らしさがない。 生物的行為のため社会との繋がりが物理的にみえてしまうからでしょう。 排卵期や精液検査、体外受精など幾つもの言葉が物語に食い込んでいきます。 この激しい対話で作品がヒットしたと言ってもよい。 現に迫力がある。 現代社会の夫婦が置かれている厳しさが出ています。 作品が最優秀リバイバル賞をそしてビリー・パイパーが最優秀女優賞を取ったのも頷けます。 
でもイェルマは何故これほどまでに子供が欲しいのかが分からない。 出産へつながる具体的行為がとても強いだけです。 彼女の母性本能も見えない。 現代社会での彼女を動かす大きな力とは何か? でもこのような舞台はやはり日本では観ることができない。 家族結婚夫婦出産仕事など基本観が違う為とも言えます。 考えさせられました。
この作品は「受胎」「幻滅」「休戦」「現実」「欺き」「堕落」「帰宅」の7章から成り立っている。 章やシーケンスの間に日時の経過や状況を補足する語彙が入るがどれも厳しい言葉です。 でも画面一杯にデカデカと表示された文章を読むと脳内が停止して物語の流れが途切れてしまう。 章名はともかくデカデカ文章は不要でしょう。
*NTLナショナル・シアター・ライヴ作品
*作品サイト、https://www.ntlive.jp/yerma