■死の都

作曲:E・W・コルンゴルト,指揮:J・ギズリンク,演出:K・ホルテン,出演:T・ケール,M・ミラ,A・ケレミチェフ
新国立劇場・オペラパレス,2014.3.12-24
愛する妻マリーが亡くなり、妻と瓜二つの踊り子マリエッタに出会うパウル。 「欲しいのはそのカラダ、愛するひとは別にいる」。 彼の心はマリーへ、肉体はマリエッタへと二元論的な愛に苦しむパウル。 日常世界から出られない一幕はシンドイわね。
でも詩的になってきた二幕目からは少しずつ引き込まれていくの。 それはパウルが身勝手だけど真面目だから。 しかも歌手T・ケールは宗教的な声をしているからよ、ちょっと細いけど。 パウルとマリエッタの精神面に寄り添う曲もさすがコルンゴルトね。
背景に宗教が絡むと悩むわね。 「肉体の秘蹟」とは何か? 「聖血の行列」との関係は? 「ヤン・ファン・アイクの絵のようだわ」と言うマリエッタの科白では、聖母ではなく「アルノフィーニ夫妻像」を思い出してしまった。
床と両壁は妻マリーの遺品で一杯。 動けない歌手たちはより精神性に向かうしかない。 独特な良さがあったけど、途中での観客の拍手は一度も出来なかった作品と言えば当たりかしら? 地中海性気候の土地には合わないのは確かね。
*NNTTオペラ2013シーズン作品