■空のハモニカ

作:長田育恵,演出:扇田拓也,出演:てがみ座
座高円寺,2013.8.1-4
金子みすゞの生活が舞台だ。 18歳と24歳頃の二人のみすゞが登場する。 ここに娘の戦後時代が被さる。 時間と空間を前後に又は同時に舞台に作り出しながら、最後みすゞの服毒自殺で終わる。 方言と海の匂いで舞台は当に下関である。
みすゞの詩を知らない人が観たら面白いだろうか? 多分面白い。 昭和初期の夫婦親戚関係や時代風景が上手く描写されているからである。 では詩を知っている人ならどうだろう? 知らない人と同じ程度だとおもう。
それはみすゞの詩と日常生活が有機的に繋がっていないからである。 「・・これは金子みすゞではなくて金子テルの物語です・・」と作家が言っている通りである。 結果として文学座がいつも上演しているような平凡な芝居になってしまった。
この芝居を観たことで将来みすゞの詩を口ずさむ時に何かが変わるのか? 下関の海を思い出すかもしれない。 夏目漱石の小説の映画・舞台化を絶対観ない人は結構いる。 ここまで真剣になるような芝居ではない。