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■存在証明

■作:長田育恵,演出:眞鍋卓嗣,出演:志村史人,野々山貴之,保亜美,清水直子ほか,劇団:俳優座 ■シアタートラム,2025.11.8-15 ■公演チラシによれば数学の未解決問題であるリーマン予想を題材にしているらしい。 劇団パラドックス定数が好みそうなテーマであり、俳優座としては珍しい演目だ。 今回は題材と演出家に惹かれてチケットを購入した。 リーマン予想を予習をして劇場に向かったものの、素数分布を決定する公式は素人の私には難解で理解しきれない。 なぜリーマンはゼータ関数を素数の解決に選んだのか? そこに複素数の導入を思い立ったのか? 解析接続で座標を広げたのか? 彼の発想経緯に感心してしまう。 場内を見渡すと、俳優座ファンと思われる年配の男性が目立ち、くたびれたジャケット姿が独特な雰囲気を作り上げていた。 舞台は三方を壁で囲み、何もない空間から始まる。 必要に応じて壁が開き本棚や机などが現れては消え、場面転換が巧みに行われる。 役者も同様にリズミカルに入退場する。 途中休息を挟み約三時間と長丁場だったが、謎を追うストーリーに巻き込まれ、最期まで集中して観ることができた。 舞台は<青春群像劇>に似た<数学者群像劇>と言えるだろう。 中心人物はG・H・ハーディとJ・E・リトルウッドの二人の数学者だが、A・M・チューリングやインドの天才数学者S・ラマヌジャンも登場する。 さらに両大戦に於ける科学者の行動批判、同性愛問題、特異な能力を持つ人物など、多様な人々や事件が絡み合う。 ただし背景が散漫になり主人公が誰なのかがぼやけてしまう流れもあった。 群像劇風らしい長所と短所が同時に現れていたように思う。 とはいえ、この「散漫さ」こそが、時代や社会そして数学という真理の中で、葛藤し生きる多様な人間の「存在証明」を丸ごと描き出そうとしていたのかもしれない。 *俳優座公演No.361 *劇場、 https://setagaya-pt.jp/stage/29206/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、眞鍋卓嗣 ・・ 検索結果は5舞台 .

■城塞

■作:安部公房,演出:眞鍋卓嗣,劇団:俳優座 ■シアタートラム,2016.1.6-17 ■混乱する朝鮮で帰国の飛行機を待っている場面が過去の再現だと分かった時は緊張しました。 粗筋も読まないで行ったので劇的に受け取れました。 そして科白の掛けあいが続いていく。 小説を観ているようです。 古臭さの漂っているのが奇妙に感じます。 舞台設定が1962年の為でしょう。 息子和彦は父の拒絶症に20年近く付き合っています。 父は朝鮮から脱出する直前で異常をきたしそこで彼の時間は止まってしまったらしい。 後半、和彦の妻の圧力で父を入院させることになり最後の儀式を行う。 儀式とは終戦も近い朝鮮からの脱出場面を再現すること、つまり幕開きの<劇中劇>のことです。 この終幕の劇中劇で息子は父の時間を現在に戻すことを試みる・・。 父は今で言う新自由主義者のような考え方を持っている。 しかも息子からみると父は国家と同類のようでもある。 なぜ和彦が父の時間を現在に戻そうとしたのか? これが観ていてもよくわからなかった。 最後の儀式に和彦と踊り子は軽蔑のある目と嘲笑でその父を見ていたからです。 疑問を持ったのでプログラムを帰りに購入しました。 演出家眞鍋の文章を読んで踊り子の位置づけや先の答えである息子の行動は納得できた。 東京裁判を論じている頁もある。 早速「城塞」を読んだが裁判場面は前付のため舞台では無かったのでしょう。 「・・ナンセンス・コメディはいつの間にか深刻きわまる重量級ドラマに・・」。 安部公房は多くの仕掛けをこの作品に詰め込んでしまったようです。 *劇場、 https://setagaya-pt.jp/performances/20160106haiyuuza.html

■雉はじめて鳴く

■作:横山拓也,演出:眞鍋卓嗣,出演:若井なおみ,深堀啓太朗,保亜美ほか ■俳優座,2020.1.10-19 ■高等学校を舞台にした小説や芝居は面白い。 誰もが通過してきた場所だから思い出しながら観てしまった。 登場人物の性格や繋がりを上手く表現した科白の面白さで引き込まれてしまう。 思わずゥフッゥフッと笑いが漏れてしまう箇所も多くある。 女性教師マユと男子生徒ケンの関係を謎にしている舞台だ。 それは師弟関係、恋人関係、カウンセラー&クライアント関係等々あるが・・。 ケンは悩んでいるらしい。 それが家族崩壊だと分かってくる。  それにしても高校教師は大変な仕事だと今更ながら思ってしまった。 学校組織の外に問題の要因がある場合に教師はどのように行動し解決していくのか? その前に<問題は個人で抱えるな!>はどの組織でも言える。 教師マユは男子生徒との関係をどの時点で個人から切り離し組織へ渡せばよかったのか? 舞台を観ながら考えてしまった。 スクールカウンセラーも答えられない。 しかもこの作品は結末が<芝居的>だ。 教師マユは「自分が責任をとる!」と叫ぶ。 たとえ部下が一人で問題を抱えてしまっても管理者が責任を取るのが組織の存立理由でもある。 校長はそう動こうとしているようで少し安心した。 会社組織のことも考えながら観てしまった。 サッカー部マネジャーが教師へ問う最後の言動は立派、そして教師マユは行動に問題もあるが直向きな人間愛がケンに伝わったのがこの芝居のオチだろう。 それは母性愛の様なものかもしれない。 ということでプログラムを買うことにした。 この芝居もそうだが、ドロドロした人間関係が広がっている生徒の後ろへ片足どころか両足を教師は突っ込むしかない。 「教員の皆様、日々ご苦労様です」と作家も書いている。 タイトルの「雉はじめて鳴く」はケンの母への反抗を指していると見たが、教師との関係が新しい段階に入った意味もあるようだ。 終幕の車椅子の女とそれを引く男が誰だったのかは書いてなかった。 *劇団俳優座第340回公演 *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/104053

■オペラ・クラブ・マクベス

■原作:W・シェイクスピア,台本:高瀬久男,作曲:林光,演出:眞鍋卓嗣,出演:こんにゃく座 ■吉祥寺シアタ,2016.2.5-14 ■舞台は劇中劇になっている。 しがないサラリーマンがある酒場に入るとそこでは「マクベス」を上演している。 そして男はいつのまにかマクベスを演じているではないか! 男が王冠を手にするまでの流れは素晴らしい。  酒場舞台上のマクベス夫人を見て(男の)妻ではないかと狼狽える場面、マクベスと(男が)少しずつ同期・一体化していく過程は面白い。 しかしなぜ王を殺すのか? 次々と事が起こる場面ではマクベスと夫人の葛藤や意思が見え難い。 解説のような科白と明るく歯切れの良い歌唱が続く為もある。 人物関係も予習をしておかないと判りづらい。 しかも後半は登場人物が入り乱れるためマクベスの不在が目に付く。 夫婦にもっと焦点を当てないと作品がぼやけてしまう。 歌劇というのは終わってからも演奏と歌唱の余韻で心地よい気分が続くのは嬉しい。 オペラを身近に感じさせる舞台であった。 ところで2幕(後半)は他オペラ劇団でも苦労しているらしい*1。 *1、 「マクベス」(MET,2008年) *CoRich、 https://stage.corich.jp/stage/72342

■2016年舞台ベスト10

□ 城塞   演出:眞鍋卓嗣,劇団:俳優座 □ 黒蜥蜴   演出:宮城聰,劇団:SPAC □ カルメン   演出:金森穣,舞団:Noism □ イェヌーファ   演出:クリストフ.ロイ,指揮:トマーシュ.ハヌス □ 安全区、堀田善衛「時間」より   演出:獄本あゆ美,出演:メメントC □ 夢の劇、ドリーム・プレイ   演出:白井晃,台本:長塚圭史,振付:森山開次 □ 887   演出・出演:ロベール.ルパージュ □ Cross Transit   演出:北村明子,ドラマトゥルク:キム.ハク,音楽:横山裕章 □ Woodcutters伐採   演出:クリスチャン・ルパ □ 治天ノ君   演出:日澤雄介,出演:劇団チョコレートケーキ *並びは上演日順。 選出範囲は当ブログに書かれた作品。 映像と美術は除く。 * 「2015年舞台ベスト10」

■城塞

■作:安部公房,演出:上村聡史,出演:山西惇,椿真由美,松岡依都美,たかお鷹,辻萬長 ■新国立劇場・小劇場,2017.4.13-30 ■牢獄のような薄汚い部屋は両側の壁が遠近法で造られていて安定感ある砦のようにみえる。 そして奥窓の赤いカーテンへ目が落ちて行きます。 男は男の父が朝鮮脱出劇をなぜ演じて来たのか明快に応えます。 戦争と企業の関係、そこから見えてくる国民の戦争の立ち位置をです。 男の妻や踊り子も男の裏を暴き出す。 謎は一つも無い。 昨年観た 眞鍋卓嗣演出 と思わず比較してしまいました。 面白さの質が違うのです。 今回ここまでハッキリ言い切っているのは社会に余裕が無くなっているからでしょう。 50年代のSF、「砂の女」から始まる衝撃の60年代作品、70年代「箱男」から「方舟さくら丸」の80年代中頃までのヒット小説を面白く読んだ時期があったが、「城塞」の二公演をみて安部公房が大きく一回転して始まりに戻ってしまったように感じる。 「終わりの始まり」の一つの形かもしれません。 *NNTTドラマ2016シーズン作品 *劇場、 http://www.nntt.jac.go.jp/play/performance/16_007980.html

■楽園

■作:山田佳奈,演出:眞鍋卓嗣,出演:豊原江理佳,土井志桜央梨,西尾まり他 ■新国立劇場・小劇場,2023.6.8-25 ■「日本のどこかの島」が舞台です。 閉じられた共同体を描こうとしているらしい。 でもそのような世界はどこにもない。 島の子どもたちは都会へ就職・就学をする。 そして訳あっての出戻り。 ときどき助っ人外国人も流れ着く。 ドブ板選挙や村内の噂話、伝統宗教の形骸化・・。 現代日本の生活から摘まみ食いをして、誇張させた舞台にみえました。 しかも噂話や小事件には垢(既視感)が纏わりついてる。 7人の女性が登場するが、二人は外来者です。 一人はカメラマン。 でも彼女の企業も島に似て窮屈な共同体らしい。 もう一人は巫女、神々の代理人です。 しかし「(神は)どこを目印にして降りてきていいかわからない」。 古い共同体の崩壊はショウガナイ? 巫女に呼ばれた神々は何事もなかったように神殿で踊る・・。 個々バラバラのままで如何に生きていくか?を問うている舞台にみえました。 他者と下手に引っ付くのは怖い、上手に引っ付くのも難しい時代です。 個を強くしていくことが当分続きそうですね。 *NNTTドラマ2022シーズン作品 *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/play/blissful-land/