■城塞

■作:安部公房,演出:眞鍋卓嗣,劇団:俳優座
■シアタートラム,2016.1.6-17
■混乱する朝鮮で帰国の飛行機を待っている場面が過去の再現だと分かった時は緊張しました。 粗筋も読まないで行ったので劇的に受け取れました。 そして科白の掛けあいが続いていく。 小説を観ているようです。 古臭さの漂っているのが奇妙に感じます。 舞台設定が1962年の為でしょう。
息子和彦は父の拒絶症に20年近く付き合っています。 父は朝鮮から脱出する直前で異常をきたしそこで彼の時間は止まってしまったらしい。 後半、和彦の妻の圧力で父を入院させることになり最後の儀式を行う。 儀式とは終戦も近い朝鮮からの脱出場面を再現すること、つまり幕開きの<劇中劇>のことです。 この終幕の劇中劇で息子は父の時間を現在に戻すことを試みる・・。
父は今で言う新自由主義者のような考え方を持っている。 しかも息子からみると父は国家と同類のようでもある。 なぜ和彦が父の時間を現在に戻そうとしたのか? これが観ていてもよくわからなかった。 最後の儀式に和彦と踊り子は軽蔑のある目と嘲笑でその父を見ていたからです。
疑問を持ったのでプログラムを帰りに購入しました。 演出家眞鍋の文章を読んで踊り子の位置づけや先の答えである息子の行動は納得できた。 東京裁判を論じている頁もある。 早速「城塞」を読んだが裁判場面は前付のため舞台では無かったのでしょう。
「・・ナンセンス・コメディはいつの間にか深刻きわまる重量級ドラマに・・」。 安部公房は多くの仕掛けをこの作品に詰め込んでしまったようです。
*劇場サイト、https://setagaya-pt.jp/performances/20160106haiyuuza.html