■からたち日記由来

■作:鹿沢信夫,演出:鈴木忠志,出演:内藤千恵子,平垣温人,塩原充知,劇団:SCOT
■吉祥寺シアタ,2015.12.19-26
■チンドン屋家族の母・息子・伯父の三人が講談「からたち日記」の由来を語り歌う舞台である。 ここに伯爵令嬢芳川鎌子と専属運転手の心中事件が入っている。 鎌子と夫の関係は最初から冷えていたようだ。
母は鎌子と運転手、息子が運転手の一人二役・二人一役の面白い構成を取っている。 また息子は首相田中義一になり野党議員の伯父とソビエト情勢で論争したりもする。 三人はチンドン太鼓、クラリネット、ハーモニカで演奏も担当している。
そして舞台は「からたち日記」の旋律を背に鎌子の満たされない人生が語られていく。 「一度でいいから愛し愛されたい・・」。 ・・。
動きは少ないが熱い振動が伝わってくる。 役者の存在感、言葉の力が詰まっている喋り方、哀愁漂う歌謡曲、その全てが先の台詞に収斂していく。 それは人生を一言で表す科白だから。 終幕で島倉千代子の歌を聴いたときは情念の舞台が昇華していくようだった。
*CoRich、https://stage.corich.jp/stage/69635