■ベベール年代記-セリーヌの世紀、第一部-

■演出:清水信臣,出演:劇団解体社
■左内坂スタジオ,2015.12.10-15
■1944年、ルイ=フェルディナン・セリーヌがフランスを追われドイツを横断しデンマークへ亡命する過程を描いているの。 この時期を描く作品としては逆の経路を辿るのがとても珍しい。 彼は反資本主義・反ユダヤ主義・反共産主義者と言われているからよ。 でも興味深いことは確かね。  最初にパリからデンマーク迄の大凡のことが文章とスケッチで映像として流される。 行程では猫を連れているらしい。 よく公共交通が動いていたものだと感心してしまうわね。 チラシ等には彼の証言にスポットを当てると書いているけど舞台ではフランス語の科白もあり特有の難しさがある。 ドイツの日本大使館での歓迎パーティや土井晩翠の激励メーセージなども読みあげられる。 一部の役者は科白が呟きのように聞こえる。 亡命する者もさせる者もこの時代の中でのつぶやきを身体表現すると痙攣になるのかもしれない。 音楽や照明も含めてまとまっている舞台だった。 でもセリーヌの声も姿もどこにいるのかハッキリと見えてこない。 彼の著書や録音に目を通しておかないと近づき難いことは確かね。