■海の夫人

■作:H・イプセン,演出:宮田慶子,出演:麻美れい,村田雄浩ほか
■新国立劇場・小劇場,2015.5.13-31
■不規則な床板で色の少し褪せているテラスが素敵ね。 前半は物語を組み立てようと躍起になっているのが見て取れた。 でもあまり気にならない。 演出に余裕が出ていたからだと思う。
船乗りは幽霊かもしれない? 筋を知らないから先をいろいろ想像しちゃった。 エリーダが見知らぬ男と出会った場面でル・グウィンの「ゲド戦記」を思い出したの。 肝心な所で別の作品を想起することはよくあるのよ。 自由や責任を論ずるというよりエリーダの魂の解放や世界の回復と捉えてしまった。 見知らぬ船乗りはエリーダを脅かし続ける自身の影かもしれない。
しかもエリーダの夫や子供たちへの無関心な態度にはある種の自由が感じられた。 子供たちには辛いけど・・。 彼女はイプセン世界の人ではない。 夫を選択するクライマックスでヴァンゲルとの方向がズレてしまった原因はこれね。
結婚は売買でも、この作品がそうだけど最高の贈与に変換する力を持っているの。 エリーダは自身の影を得て売買を贈与に変えることができた。 ボレッテとアーンホルムの婚約も同じ道を歩もうとしているようね。
沼地で鯉の比喩を持ちだして海の香りが消えてしまったけど、海は世界への扉として舞台を最後まで包みこんでいた。 それとリングストランとヒルデの動きと科白はスパイスのように効いていたわよ。
*NNTTドラマ2014シーズン作品
*劇場サイト、http://www.nntt.jac.go.jp/play/performance/150501_003733.html