■カウラの班長会議

■作・演出:坂手洋二,劇団:燐光群
■スズナリ,2014.7.10-20
■オーストラリアの学生達が映画製作をしている劇中劇のようだ。 カウラ捕虜収容所も初めて聞く。 日本人捕虜の脱走事件を扱っている。 脱走を実行するか否かは班の投票で決める。 最後に実行されるがその理由が、
「大日本帝国に捕虜は一人もいない」「故郷には既に自分の墓が作られている」「捕虜と知られたら家族は村八分にされる」「妹や娘の結婚にも支障がでる」「少しでも味方の援軍となれるなら」「武士道伝々・・」「天皇伝々・・」。
フィルムを脱走前に巻戻し、兵隊たちの心の内なる声を出すように促す。 結局は同じだ。 過去は変えられない。 「未来に託すしか無い」と学生たちは言う。 しかし頼りない終幕だ。
韓国フェリー沈没事故の話だが、いつものトラック運転手たちは救命具を背負って非常口に待機していたと聞く。 表向きは従うが、船内放送もフェリー会社も日頃から信用していなかったからである。 彼らはいち早く逃げて助かっている。
「国家」もフェリー会社と同じだ。 日常生活でこれは変だと感じた時はその因果を問い続けていくしか無い。 この積み重ねが雁字搦めの状況から逃げ出すことができる。 国家は問い続けるものであり信じる対象ではない。