■永遠の一瞬

作:ドナルド・マーグリーズ,演出:宮田慶子,出演:中越典子,瀬川亮,森田彩華,大河内浩
新国立劇場・PIT,2014.7.8-27
終幕にジェイムズが新しい恋人と結婚することをサラに告げます。 そして彼女は戦場取材に再び出かける場面で幕が降ります。 この場面をみて何を言いたいのか少しわかりましたが、煮え切らない芝居でした。 原因は・・
負傷姿のためサラの心情がよく見えません。 ジェイムズも精神疾患を持っているようです。 薬物・酒・怪我などは物語を浅くします。 これでサラとジェイムズの暗さとリチャードとマンディの明るさだけが残りました。
映画が忘れた頃に話題になります。 「ボディ・スナチャ」「未来世紀ブラジル」「シド&ナンシ」「酒とバラの日々」。 脇道へ逸れてリズムが狂います。 ホラー映画も悩みます。 映画を知らない人は苛立つでしょう。
現実への対応が鈍感すぎます。 リチャードがジェイムズの戦争記事を放ったらかしにしたこと、ジェイムズが写真記事の納期を気にしないことなど、「仕事=納期」を叩きこまれている人から見れば有り得ない。 余談ですが。
真実という正義を振りかざしているだけのサラやジェイムズの被写体への無関心があります。 サラはこの件で一度は反省しますが、心がこもっていないことは後の行動にも表れています。 ジェイムズも同じです。・・紛争地域へのサラとジェイムズの対応はまさに米国そのものです。
チラシに「幸せとは何かを問う」とあります。 ジェイムズの科白「幸せな家庭を築こう」と「戦争は終わらない」はどちらも「宙づりの一瞬」です。 問の答えはリチャードとマンディのおのろけ夫婦で十分でしょう。
*劇場サイト、http://www.nntt.jac.go.jp/play/performance/16_001635.html