■象

作:別役実,演出:深津篤史,出演:大杉漣,木村了
新国立劇場・小劇場,2013.7.2-21
舞台一面が古着だ・・! 病院ベッドが置いてある・・。 ・・そこに寝ている「病人」は病人にみえない。 ギラギラしている目、甲高い喋り方でわかる。 そして「男」も詩のような科白を喋るが裏も影も無いような男だ。 二人は元気が良すぎる。
そして「病人」だけが盛り上がってしまい舞台に亀裂が生じない。 この二人から離れるほど<別役+深津>的人間が登場する。 その「看護婦」や「通行人」が舞台に小さな亀裂を運んでくる。 しかし「病人」が強すぎて舞台はびくともしない。 もっと亀裂の中を覗いてみたい芝居であった。 連日の暑さで深津は別役の毒気に当てられてしまったのか?
しかしこれは広島が舞台だが近未来を描いたようにもみえる。 核を持っている限り続くであろう未来に何度かやってくる姿である。 そしてケロイドはいつもシミになるのを繰り返す。 演出家が残した未来の姿である。