■わが心の歌舞伎座

監督:十河壯吉
東劇,2013.3.16-5.10
花道下や着板番・楽屋の床の間・通路・勝手・・を見ていると歌舞伎座が素晴らしい建物にはみえません。 しかし歌舞伎俳優はこの建物の全てを身体に染み込ませて初めて舞台で演じることができる、この映画はそう言っているようです。 片岡仁左衛門の楽屋敷居の磨り減り具合や、柱に付けた子供の身長の印の話も同じです。 何人かの役者がロビーに茣蓙を敷いて稽古をした思い出を話していました。 劇場ロビーの隅々までが記憶していたから練習の成果が出たはずです。
「・・玄関をほんの少し後ろに下げた・・、入口の石段も無くした・・、ロビーの長椅子が無くなった・・、・・・、」と上村以和於はブログに新歌舞伎座の違和感を書いています。 観客でさえこれですから役者の違和感は相当でしょう。 そして役者たちは再び、数十年をかけてこの新しくなった建物をゼロから身体に馴染ませていくのですね。
*シネマ歌舞伎作品