■高き彼物

■作・演出:マキノノゾミ
■吉祥寺シアター,2012.7.4-10
■このような状況で先生と聞けば漱石の「こころ」を思い浮かべてしまう。 比較するのは野暮だが、なんと先生の秘密は同性愛的な事件であった。 しかも歳を重ねれば笑って済ませるような内容である。 大人気無いと言えばそれまでだが。
この芝居の面白さは次の点にある。 一つは二人の女性、猪原智子と野村市恵の日常生活や事件などで的確な行動をみせてくれることである。 不甲斐ない男性群をリードし無理なく熟れた対応をしていた。
もう一つはココロの秘密を他者にありのままに話すということである。 祖父に指摘されてはいたが猪原正義と市恵がお互いに好きだったことや、事件内容を正義や片山仁志が率直に告白する場面である。
どちらもタイミングが大事であるが、急いだ舞台でもまとまっていた。 そしてこの二つを高校生藤井秀一が他者の熱い身体を通して体験することだろう。 秀一が人生を社会を再び肯定すると確信が持てる。 だから観客は満足して劇場を後にできるのだ。