■サロメ

■作:O・ワイルド,演出:宮本亜門,出演:多部未華子,成河,麻美れい,奥田瑛二
■新国立劇場・中劇場,2012.5.31-6.17
■地下に牢獄、地上が居間、そして観客が居間を見下ろせるように天上に鏡が掛かっている。 三層構造の舞台だ。 周りは堀で観客席近くは城壁である。 城壁でも役者が動きまわる。 中劇場のツマラナイ広さを解消している面白い構造である。
サロメとヨカナーンの対話場面は見応えがあった。 リズムがあり耳に卒直に入る台詞がいい。 ヨカナーンは不思議感がでていた。 預言もきっちりと聞き取れた。
しかしヨカナーンの首をめぐってのヘロデとサロメの対話は物足りない。 ヘロデが真珠やトパーズ、鳥や土地など贈与の言葉に満ちているのに、サロメは首が欲しいの一言だけだから。 これから深淵に向かうサロメにとっては休み過ぎだ。
サロメは子供のように可愛くて素敵だ。 しかしイノセンスから発散する感動は残念ながら無い。 それは無邪気の中にある残酷が機械的だからである。 この種の無邪気さは芝居として成立し難い。 並の演出では乗り越えられない。
*劇場、http://www.nntt.jac.go.jp/play/salome/