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■ピローマン

■作:マーティン・マクドナー,翻訳・演出:小川絵梨子,出演:成河,木村了,斉藤直樹,松田慎也ほか ■新国立劇場・小劇場,2024.10.3-27 ■飲酒や麻薬、認知症や精神疾患の人物が登場する舞台は厄介です。 酒や病自身が舞台で役者から離れて独り立ちしてしまう。 それは役者より強い。 現実と舞台の<境界>を崩してしまう。 精神疾患らしい兄ミハエルは言語能力が低い。 彼は現実世界と言語世界の<境界>が分からない。 兄は弟のカトゥリアンが書いた小説を読んで殺人を犯してしまう。 ここで観客(私)は精神疾患という病が犯したという現実に一瞬醒めてしまう。 弟も精神疾患に属する人だが<境界>を越えないので観客は物語から醒めない。 後半、兄の言語能力を向上させ疾患を目立たなくすることで切り抜け、また兄の罪を弟がすべて被ることで舞台をまとめ直した。 弟の対応を正当化する酷い過去は両親の滑稽な行動で漫画にみえる。 両親の感化を受けた弟のサイコパス小説も同じです。 二人の刑事アリエルとトゥポルスキも兄と弟をずらした位置にいます。 これらサイコパス世界を楽しむという観方も有りでしょう。 今回は病の現実が<境界>を乗り越えてしまったが役者の演技力で何とか凌いだ。 力尽くでまとめた舞台でした。 *NNTTドラマ2024シーズン作品 *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/play/the-pillowman/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、小川絵梨子 ・・ 検索結果は23舞台 . *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、マーティン・マクドナー ・・ 検索結果は3舞台 .

■夢遊病の女

■作曲:V・ベッリーニ,指揮:マウリツィオ・ベニーニ,演出:バルバラ・リュック,出演:妻屋秀和,谷口睦美,クラウディア・ムスキオ,アントニーノ・シラグーザ他 ■新国立劇場・オペラハウス,2024.10.3-14 ■ガランとした広い舞台にアミーナの歌唱が響き渡る。 壊れてしまいそうで少しハラハラしたわよ。 エルヴィーノの筋が鍛えられたテノールは安心して聴いていられる。 合唱団も伸びがあり余裕が感じられた。 団が舞台を動き回らなかったから? それより、この作品はこの劇場の特長と合致しているのかもしれない。 演出がとても変わっていた。 二度目の夢遊状態ではアミーナが屋根の上で演技をするの。 落ちやしないかと又もハラハラ。 夢遊病には罹っていないようにみえる。 しかも屋根の上で幕が下りてしまう。 「人生をどう生きるかを決めるのはアミーナ自身・・」。 演出家が言っていた通りの終わり方ね。 そうそう、10人のダンサーがアミーナの周りで踊るのも驚きね。 彼らは病自身を表現しているらしい。 衣装が灰色系で顔も薄く炭を塗っているので目障りにならない。 これも面白い演出だとおもう、あとロドルフォ伯爵の女好きも。 でも、何枚もの洗濯シーツはどういう意味?、入浴は不要かな、そして大きな動力機械は何なの? すべてが夢遊病的な美術だった。 うん、楽しい。 作曲家が考えた(であろう)恋人や村人の舞台感覚が素直に現れていたとおもう。 MET2008年作の「夢遊病の娘」を8月に観ているが、やはり生舞台は最高。 観後は心身が生き返ったわよ。 *NNTTオペラ2024シーズン作品 *劇場、 https://www.nntt.jac.go.jp/enjoy/record/detail/37_028433.html

■薄い紙・自律のシナプス・遊牧民・トーキョー(する)

■振付:山﨑広太,出演:セシリア・ウィルコクス,ベロニカ・チャング・リュー,松田ジャマイマ他 ■シアタートラム,2024.10.12-14 ■山崎広太が踊りながら登場し、郡司正勝との出会い、岡田利規の演劇について、脱身体へ向かうには、中動態とは、住んでいたブルックリンや映画人のこと、いま住んでいる蒲田の感想、イスラエル問題などなどを話す。 プレトークとプレダンスを合わせたようなものです。 次に5人のダンサーが踊り始める。 日常のヒト・モノ風景に触れる感情の揺れ、その身体感覚を言葉で表現し踊りながら喋る。 しかも多動性障害のような動きが振付に漂う。 この延長に山崎広太の特徴である登場と退場、つまり「立ち上がり消えていく」空間を作り出します。 観ながら2000年頃の舞台を思い返す。 当時はダンサーが<その空間>を横断する仕方が物理的だった。 舞台の上手から下手へダンサーは現れ消える。 25年経った現在は科白という詩的言語でダンサーは空間に残りながら現れ消える。 表現が複雑になったようにみえます。 面白い舞台でした。 上演時間は70分だったが10分ほど短縮してもよい。 詩が入ると緊張感が高くなるからです。 客席は多様性豊かでしたね。 残念ながら、アフタトークは都合が付かず聞けなかった。 *劇場、 https://setagaya-pt.jp/stage/20463/

■能楽堂十月「舟渡聟」「天鼓」

*国立能楽堂十月普及公演の□2舞台を観る. □狂言・和泉流・舟渡聟■出演:三宅右近,三宅右矩,三宅近成 □能観世流・天鼓(弄鼓之楽)■出演:梅若紀彰,高澤祐介ほか ■国立能楽堂,2024.10.12 ■「舟渡聟(ふなわたしむこ)」は聟入りする男が祝儀の酒を持って乗船するが、酒好きの船頭にせがまれて仕方なく酒を飲ませてしまう。 家に通されると、舅が船頭だった! 舅の失態を描くが、二人が謡と舞で締めるところに舞台的な感動が出ている。 「天鼓(てんこ)」は地謡のゆっくりした基調から律動的な後場の舞楽まで、一貫性のとれた流れが気持ちよい。 子を亡くした父の思いが迫ってくる。 舞楽ではリズムが合ったせいか舞踊特有の恍惚感に浸ることができた。 小書「弄鼓之楽(ろうこのがく)」は前半でシテの心情を省き、舞では太鼓が入りシテがのびやかに舞い遊ぶ。 今日の舞台は期待以上の内容だった。 シテ面は「小牛尉(こうしじょう)」から「童子」へ。 プレトーク「鼓が結ぶ親子の縁」(宮本圭造解説)を聴く。 ・・世阿弥と長男元雅の関係を「天鼓」に繋げた小林静雄の話は現代では否定されている。 「天鼓」は創作能の位置づけと考えてよい。 星は月と違い不気味なモノとして日本では扱われた。 逆に星に愛着の強いのが中国である。 七夕の彦星織姫の別れが「天鼓」に反映されている。 この別れが江戸時代の近松門左衛門や歌舞伎義経千本桜の初音の鼓へ繋がっていく。 ・・。 楽しい話が一杯だった。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2024/10168/

■能楽堂十月「酢薑」「巻絹」

*国立能楽堂十月定例公演の□2舞台を観る. □狂言・和泉流・酢薑■出演:佐藤友彦,今枝郁雄 □能・金剛流・巻絹■出演:今井清隆,今井克紀,宝生常三ほか ■国立能楽堂,2024.10.9 ■「酢薑(すはじかみ)」は酢売り商人と薑(生姜)売り商人が秀句を競い合う話。 互いに認め合い高笑いして終わるのが清々しい。 「巻絹(まきぎぬ)」は熊野本宮に絹を奉納し巫女が舞を舞う話である。 都から絹を運んできた男(ツレ)は遅刻をするが巫女(シテ)に助けられる。 その巫女は祝詞を上げ神仏を称えるが神々が憑依し激しく狂い舞う。 巫女の舞は見応えがあった。 ところでツレの男が目をつむり科白を喋っていたがこれは頂けない。 地謡ならともかく、舞台では役者は目を見開いたままでいるべきだ。 シテ面は「増女(ぞうおんな)」(近江作)。 気品のある白色が際立っていた。 *劇場、 https://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2024/10163/

■ふくすけ2024、歌舞伎町黙示録

■作・演出:松尾スズキ,出演:阿部サダヲ,黒木華,荒川良々,秋山菜津子ほか ■Bunkamura・配信,2024.10.5-11.4(ミラノ座,2024.7.24収録) ■ミラノ座夏の公演は行かなかった。 今回、運良く配信があったので観ることにしました。 ・・観始めたがしかし、物語に没入することができない。 よくあることなので見続ける。 そのまま1幕が終わってしまった。 2幕に入っても同じです・・。 理由をいろいろ考えてみる。 場面と場面が繋がっていかない、しかも舞台を空間分割しながら展開するので煩雑過ぎる。 分散舞台と言ってよい。 また、照明が暗いので印象が弱い(映像のため?)。 役者の素っ気ない喋り方、マイクを使うためかコクが沸いてこない。 ・・などなど。 松尾スズキ演出の作品は初めて観ました。 演出方法に馴染んでいなかったのかもしれない。 赤子の死体が掘り出されたところからやっと舞台へ向かうことができた。 歌舞伎町裏組織や新興宗教団体を登場させ、ここに盲目や吃音症・巨頭症など身体障碍者の「不平等や不条理に対する怒り・・」を融合し「悪もまた人の姿」を描き出そうとしているようです。 それにしても散らばりすぎた。 終幕の舞台分割で人物たちを集めてまとめようとしたが遅かったですね。 *Bunkamura、 https://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/24_fukusuke/

■アーネストに恋して Ernest Shackleton Loves Me

■作曲:ブレンダン・ミルバーン,演出:リサ・ピーターソン,出演:ヴァレリー・ヴィゴーダ,ウェイド・マッカラム ■東劇,2024.10.4-(トニー・カイザー劇場,2017年収録) ■登場人物は二人だけ? ミュージカルにしては珍しい。 その一人、主人公であるシングルマザーのキャットは作曲家として登場する。 この為か、作曲しながら歌っているような錯覚が時々生じます。 彼女が作詞を実担当したこともあるのかもしれない。 しかもエレキバイオリンを弾きながら歌う。 15曲を歌うが半分以上を弾いていましたね。 鍵盤楽器はたまに見るが、この舞台は珍しいことが一杯詰まっている。 アーネスト・シャクルトンとは誰か? 初めて聞く名前です。 調べると・・、南極探検家らしい。 1909年頃の探検を題材にしている。 彼はキャットが住んでいる冷蔵庫から登場し、この部屋で二人は南極にいるかように探検を続け、再び彼は冷蔵庫から南極へ戻るという楽しい設定になっている。 アーネストはへこたれない楽天主義者ですね。 南極大陸での偉業からも分かる。 生活に疲れたキャットは彼から不屈の精神力をもらう。 全てに於いてオフ・ブロードウェイらしい内容でした。 *松竹ブロードウェイシネマ作品 *映画com、 https://eiga.com/movie/101365/

■蛮幽鬼

■脚本:中島かずき,演出:いのうえひでのり,出演:上川隆也,稲盛いずみ,早乙女太一,堺雅人ほか,劇団☆新感線 ■新宿バルト9,2024.10.-(新橋演舞場,2010収録) ■「巌窟王」を題材にしているようです。 それを、いつもの脚本&演出コンビが練りに練った内容に変えている。 ゲキXシネの中でも特に凝った作品と言ってよいでしょう。 監獄島から脱出した主人公伊達土門は復讐を遂げるが、国家再生の渦に巻き込まれて己を見失ってしまう。 次から次へと登場する人物たちはしっかりと目的を持って舞台に上がってきます。 彼らは主人公に直接間接に絡みながら目的を達成して(多くは死をもって)退場していく。 土門と恋人美古都はもはや過去に戻れないほど社会的精神的に複雑化してしまった。 互いに求める心が残っていながら、土門は大君になった美古都の手に掛かり幕が下りる。 次々と繰り出してくる新たな展開にブレが無い。 見事です。 久しぶりに全力で駆け抜けたようなカタルシスを体感しました。 *ゲキXシネ2010年作品 *映画com、 https://eiga.com/movie/55593/ *「ブログ検索🔍」に入れる語句は、いのうえひでのり ・・ 検索結果は14舞台 .