■日本文学盛衰史

■原作:高橋源一郎,作・演出:平田オリザ,出演:青年団
■吉祥寺シアター,2018.6.7-7.9
■4人の小説家、北村透谷・正岡子規・二葉亭四迷・夏目漱石の葬儀場面が舞台です。 4場から構成され、通夜ぶるまいの席で参列者が世間話をする。 懐かしい小説家ばかりですね。 多くは中・高校時代に読んだ作家でしょう。 でも北村透谷は記憶がない。
4場とも座敷では森鴎外が仕切っていく。 一場の透谷が面白かった。 後場へ行くほどつまらなくなる。 同じような繰り返しで差異が掴み難い為です。 特に夏目漱石の四場は登場作家が多すぎる。 その中で詩人たちは存在感が出ていましたね。 詩の朗読は舞台に強い。 宮沢賢治、若山牧水、石川啄木・・。
座敷での主要な話題を拾うと、一つは内面の問題、もう一つは翻訳の問題、それと嫁姑の問題です。 内面はもろに近代文学に通じますが、翻訳は国内と外国の二つがある。 国語の整備は国家統一に繋がるからです。 井上ひさしの舞台を思い出しますね*1。
この舞台の一番の驚きは世間話に現代が含まれることです。 大谷翔平やW杯、加計学園まで話題に登る。 面白いがコントロールが難しい。 戻った時に過去の話題が一瞬途切れてしまう。 演出家は計算済だとおもいますが。
通夜に訪れる作家の名前を一つ一つ追っていくとその時代が現れて来る。 青春群像劇たる所以です。 煮え切れないのは通夜だからでしょう。 「明治150年」が経っても当時の問題は形を変えて続いているようですね。 嫁姑を含め家族関係の変わらない日本が少子化へ進んだことは作家盛衰史で納得がいきます。 そして終幕のダンスがデスロック「再/生」に似ていたのは演出家のメッセージのようで意味深でした。
*1、「國語元年」(栗山民也演出,2015年)
*青年団第79回公演
*劇場サイト、http://www.musashino-culture.or.jp/k_theatre/eventinfo/2018/03/seinendan79.html