■繻子の靴、四日間のスペイン芝居

■作:ポール・クローデル,翻訳・演出:渡邊守章,映像・美術:高谷史郎,照明:服部基,音楽:原摩利彦,衣装:萩野緑,出演:剣幸,吉見一豊,石井英明,阿部一徳,小田豊ほか
■静岡芸術劇場,2018.6.9-10
■上演8時間の舞台はどのように作るのだろうか? 「譜面台を前に俳優が朗読する局面と実際に演技をする局面を組み合わせる」ことで可能にしたらしい。 演出家は朗読場面を「オラトリオ型」と呼んでいる。 
段々畑に似た「三層舞台」も面白い。 舞台地上、2階、3階の3段床で役者は演技をする。 しかも3分割された正面壁に映像を映し出すことで役者と映像の一体化が隅々まで可能になる。 スペイン大航海時代らしく海や星、船が映しだされるので物語背景を楽しく描くことができる。 星々を見ていると昨年の「子午線の祀り」を思い出す。 ・・ナント野村萬斎も登場するではないか! でも映像ではシラケる。
芝居は4幕だがそれを四日間と言っている。 第一日目は「オラトリオ型」や「三層舞台」に戸惑ったが休息を挟んで二日目途中から物語に入り込むことができた。
スペインからアフリカへ、アメリカへ、そしてアジアへ、日本へ・・。 主人公ドニャ・プルエーズの先夫ドン・ペラージュは途中亡くなり後夫ドン・カミーユとドン・ロドリッグの三人に絞られていくのだが、地理的な広さを背景とした三角関係に想像が追いつかない。 アメリカへ行き戻るにも当時なら数年いや十年単位になる。
世界の広さ!、大航海時代の海と星と人生一生が混じり合うところに芝居の面白さがある。 広さが時間として積み重なっていきプルエーズとロドリッグの愛が大海原に溶けていく感覚が舞台に現れる。 終幕の四日目、ロドリッグにもその感覚が救済として訪れたのだろう。
*ポール・クローデル生誕150周年記念作品
*CoRich、https://stage.corich.jp/stage/92262