■赤道の下のマクベス

■作・演出:鄭義信,池内博之,浅野雅博,尾上寛之ほか
■新国立劇場・小劇場,2018.3.6-25
■1947年シンガポール・チャンギ刑務所に収容されたBC級戦犯死刑囚の話です。 先ずは死刑台が奥にデーンと聳え立つ異様な舞台が目に入る・・。 
BC戦犯の中に朝鮮人がいるが日本統治時代や戦争責任は強く語られない。 それは朴南星パク・ナムソンがマクベスを演じることで議論に緩衝帯が作られるからです。 これは「平昌冬季オリンピック開会式」の梁正雄ヤン・ジョンウンにも言える。 劇場WEBのトークイベントで演出家鄭義信チョン・ウィシンは「この作品の韓国版は1947年と現在の同時進行にしていた」と言っている。 しかし現在を切り捨てた理由は語らない。 朴南星は台詞で「何故マクベスは王を殺したのか? 自分で破滅の道を選んだのだ!」と。 「マクベスではなくてオセロでもよかった」は演出家の苦渋?の冗談とも言えます。
そして両民族の親子・兄弟の家族観が似ていることもあり自ずと死と向き合う姿が同期し強調されていく。 死刑囚が登場する作品はいつ見ても考えさせられます。 黒田直次郎の「頭がスッキリしてウンコは快調だ! それでも死ななければならないのか!?」は生理的にスッキリした台詞です。  明るく振る舞うほどに今この時代の舞台の位置付けが見えて来ます。
*2018.3.9追記。 食事のビスケットを食べる場面で思い出してしまった。 シンガポールで英軍の捕虜になった伯父がイギリス兵から弁当を入手した時の話をです。 英軍の弁当は1個で2食分あり食後のデザート用に紙に包まれた煙草が2本づつ入っていたそうです。 それをみて伯父は日本の負けたのが分かると言っていた。 戦場で吸う食後の煙草の旨さは計り知れない。 そして前線兵士の食料を現地調達するくらい悲惨なものはありません。 戦況次第で現地人からの食料強奪へとエスカレートし遂には戦友の肉まで食うことになるからです。 日本軍の食料調達システムは前線を飢餓地獄に変えます。 舞台に戻って・・、ビスケットを食べる時は楽しそうでしたね。 これで絞首刑の衝撃が増しました。
*NNTTドラマ2017シーズン作品
*劇場、http://www.nntt.jac.go.jp/play/performance/16_009660.html